今年1/272/24に地元で行われた、NPO法人「くらしコンシェルジェ(愛称;くらし熊本)」(代表/野村順子さん)主催の「男の生き方塾」に参加したときの講師が本書の著者でした。当塾でのテーマだった「リーダシップ論」は、吉田道雄教授が「自分を活かす人生づくり」(~朝からワクワク物語~)と改題され、ご自身のHP(http://www.educ.kumamoto-u.ac.jp/~yoshida/  )をもとに大変ユニークで楽しいお話をしていただきました。会場はしばしば爆笑の渦となったのです。

その吉田教授の「人間理解のグループ・ダイナミックス」(ナカニシヤ出版)。本書はその当日に教授のサイン入りで購入したものですが、タイトルと目次がちょっと硬めだったのでついつい読みそびれていました。(吉田教授すみません)読み終えて、改めて吉田教授の講演を思い起こしました。また、興味深く読ませていただきました。(講演ではもっとギャグが連発しますが・・・)


人間理解のグループ・ダイナミックス

「グループ・ダイナミックス」は、ゲシュタルト心理学者のクルト・レビンが創始した小集団の心理学で、集団現象を小集団に働く心理学的な諸力の関係として捉えるアプローチ。グループ・ダイナミックスを理解することによって、小集団の中で起こっていること(グループプロセス)や個人とグループの影響関係などを理解することが可能になり、さらには小集団の計画的な変革も可能になるという理論。

特に教育現場で教育者が学習の場の中で学習者間(学習者-教育者間も含む)の相互作用を高め、相互の影響関係を効果的に用い、ファシリテーター(facilitator世話人)として働きかけるための知見を得ることを目的にした研修などに使われているようです。さらに、理論を実践に生かす「アクションリサーチ」を通じて、現場での実践的な活動への援助となることを目指すもの。

本書ではこの理論をケーススタディやエピソードを交えわかりやすく解説してあります。「なるほど」と頷く部分が数多く書かれていますが、特に心の琴線に触れた箇所は次の一節でした。いじめ問題、自殺問題へのシンプルでプリンシパルな人間関係の核心部分です。

「人は『味方』がいれば、集団圧力から影響を受けにくくなるのである。『味方』の数は、問題にならないようだ。・・・『味方』を、『理解者』『支持者』と読み替えることができる。自分の理解者、同じ考えの人が一人でもいることが重要なのだ。そうなると、自分が正しいと思う行動をとることができるようになる。自分の気持ちを正直に発言する勇気がわいてくるのである。われわれは、『自分を理解(支持)してくれる人が一人でもいれば強くなれる』のだ」。

本書を読んでいてR社に勤務していた20数年前に受けたRODという研修を思い出しました。RODとは、「R Organization Development」の略で、「人材育成と組織の活性化」を目的に開発された研修プログラムです。仕事や課題について自己評価するとともに、上司・同僚・部下たちにも同じ質問をする「360度サーベイ」を特徴とします。分析結果をグループで討議し、自己変革のきっかけとする研修です。今でも形を変えつつも、多くの企業の研修に提供されています。


クルト・レヴィン

クルト・レビン(カート・レヴィンKurt Lewin);(1890 9月9 - 1947 2月12 )は社会心理学者 プロイセン Mogilno(現在はポーランド )生まれ。ユダヤ人 ゲシュタルト心理学 社会心理学 に応用しホドロジー心理学 を提唱した。ナチス に台頭に伴い1933年にアメリカ に渡り、1940ういい年にアメリカの市民権を取得。コーネル大学 教授、スタンフォード大学 教授を務める。マサチューセッツ工科大学にグループ・ダイナミックス研究センターを設立。




吉田道雄

吉田道雄氏;福岡県生まれ、1976年、九州大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学、九州大学助手、鹿児島女子短期大学講師を経て熊本大学教授(グループ・ダイナミックス)、博士(学術)・教育学修士。(財)集団力学研究所所長。主著;「リーダーシップと安全の科学」(共著2001/ナカニシヤ出版)、「偏見の社会心理学(共訳)」(1999/北大路書房)、「リーダーシップと自己教育力(共著)」(1996/明治図書)、「リーダーシップ理論と研究(共訳)」(1995/黎明書房)、「人間関係入門(共著)」(1988/ナカニシヤ出版)