ライブドア破綻による日本経済への影響はもう影を潜めているようですね。このライブドア、堀江氏が買収する前に一度破綻し、そして今回の破綻劇と経営者は違えど二度の憂き目にあってしまいました。「失敗を活かす」ことは経営の鉄則のはずですが、これが当事者になるとなかなか学べないのが人間の性というものでしょうか?しかし、多くの事例に触れることによってそういった轍を踏まなくすることが、起業家のリスクマネジメントですね。本書はそのバイブルです。




序 章 “優良”成長企業がなぜつまずくのか

第一章 個人の欲得がモノづくりの原点を忘れさせた(新日本技研㈱)

第二章 感覚の冴えに頼り見切りを誤る(㈱オカノアソシエイツ)

第三章 細心の注意を払っていても避けられなかった誤判断(北部通信工業㈱)

第四章 際立つ独創性を大事に育てられなかった浅慮(㈱ハイパーネット)

第五章 常識を無視した拡大戦略が裏目に(㈱コンパイル)

第六章 豪放磊落、面倒見のよい性格がアダに(㈱ピコイ)

第七章 体面に固執し無理を繰り返す(㈱サワコーコーポレーション)

第八章 “手抜き”経営で有名居酒屋を食いつぶす(北の家族㈱)

第九章 「世のため」という思いが経営判断を誤らせる(㈱カンキョー)

第十章 社外活動に熱中し、“無判断”のうちに破たん

終 章 「失敗」を活かし「強い会社」をつくる

附 章 ライブドアにみる起業と倒産の失敗学

著者はまず、「失敗に学ぶ」ことについて、「いちばん必要なのは、この両方(『マニュアル』『べからず集』)の機能を併せもった失敗知識である。つまり、『どう失敗したか』『どうして失敗したか』『どうすれば避けられるか』が整理して書かれていることが必要なのだ。これがあって初めて、失敗を避けて成功へと至ることができるのである。これはいわば『失敗地図』である」といっています。

そして失敗の人的原因を次の十個のキーワードにまとめています。①欲得、②気分、③うっかり、④考え不足、⑤決まり違反、⑥惰性、⑦恰好、⑧横着、⑨思い入れ、⑩自失。このキーワードは本書の各章に順番どおりに対応しています。これから起業を目指すアントレプレナーだけではなく、経営者にも必読だと思います。

「売上高という縦軸でみてみると、いずれの企業も100億円から200億円の売上高を目標にしたときに歪みが生じている。成長企業を続けているベンチャー企業にとって、100億円から200億円というのは到達可能な目標に思えるが、やはりそこには目に見えない大きな壁があるようだ。一人の経営者が自ら築き上げたビジネスモデルに基づいて事業を拡大していくのは、このあたりの売上が限度なのだろう」。

「また時間という横軸を見たときに、一つの大きな節目になるのが上場である。本書に登場するすべての企業が株式公開を果たした。株式公開は広く社会から資本を集めるための手段である。金融機関からの間接金融などによる資金繰りで苦労してきた中小企業の経営者にとって、マーケットから直接資金を集められる上場は魅力的だ」。

「・・・しかし、その実それぞれほとんど建前に過ぎない。多くの経営者が本当に欲しているのは上場による社会的認知である。『上場企業』『上場企業の社長』という社会的地位を確保することが大切なのだ」。

「・・・人間誰しも認知欲を持っているし、他者から認めてもらいたいがゆえにしばしば見栄を張る。起業という荒波に乗り出す意欲のある人は尚更だろう。株式公開という大きな目標が見えたときに、経営者の認知欲や見栄が過剰に膨れると、本来の事業目標や経営ビジョン、創業理念や社会的使命などが見失われて、会社の正しい成長のステップが狂ってゆくというケースが少なくないのである」。(附章)

起業と倒産の失敗学