母娘・家族問題研究家の麻生マリ子です。いまだに当ブログで反響をいただく記事のひとつが、北海道で発生した男児山中置き去り事件について書いた一連の記事です。
決して事件を蒸し返したいわけではなく、その声にお応えするために、一点だけ、事件とは離れた記事として、筆を執ります。
現在は、当該ご家族については、お父様が過剰に罪悪感を引きずりすぎることなく、健康な家族生活を取り戻されていることをお祈りしております。
さて、本事件について、報道や世論でよく聞かれたのが
「置き去りにされる、というのは、自分たちも子どもの頃によくやられた躾だった」
という大人たちの声。
これについて、なにが問題かを別途筆を執るとお書きしながら、書かぬままでした。
この記事は、むしろ事件からは離れたものとして書きます。
どういうことかというと、置き去りにせよ、押し入れに閉じ込めるにせよ、叩いて教えるわからせるにせよ、とにかく
「こういう躾は、自分たちも子どもの頃によくやられた躾だった(だから~ あるいは だけど~)」
という大人たちのなにが問題か、という点を述べます。
これは時代が変わったから、いまはそういう躾が主流の時代ではないから、という単純な「時代の違い」で語れるものではありません。
かつては女遊びは芸の肥やしと言われていた世界のかたが、不倫報道で「いまはそういう時代ではなかった(バッシングを受ける時代になった)」と涙ぐむのとはわけが違います。
「こういう躾は、自分たちも子どもの頃によくやられた」という大人のなにが問題かというと、彼ら自身が
自分が受けた[躾]の[理不尽さ]を、自身が[正当化]しなければ、彼らは到底生きていけない。
という傷を負いながらも、それを直視しないようにしている場合があるためです。
それが理不尽な躾であった。親からされたことが理不尽な仕打ちであったと認めること。
それは大変な苦痛を伴う作業です。
であれば、「自分が悪い子だったから(≠悪いことをしたから)、あんな仕打ちを受けても仕方がなかった」と自分を納得させること。
そのほうが、彼らの心は救済されます。無意識に、幼かった彼らはそのように自分のなかで親の行いを正当化することによって、自分を納得させ、それによって自己救済してきているのです。
しかし、自分が親という立場になったとき。
その半ば強引に自分を納得させ、抑えつけてきたことの芽が疼くのです。
それが「おなじことを子どもに繰り返す」――負の親子関係の連鎖や、虐待の再生産を生み出します。
親自身が、自分が幼い頃に「親からされたこと」を直視せず、ごまかしたまま、わが子に向き合う。
わが子が、自分の幼い頃とは違う、のびのびとした姿で過ごしている――そんなとき、あなたのなかの「小さな私」「幼い私」が暴れ出していることはありませんか。
私が指摘したかったのは、そういうことです。
もしこれをお読みになられているかたのなかに、そうした「かつては幼い子どもで、現在は親」として、ご自身のなかの疼きに気付かれたかたがいらしたら。
大丈夫ですよ。その感覚を無視しなければ、大丈夫。
「小さなあなた」「幼いあなた」の声に、耳を傾けてあげましょう。
私がお手伝いできる場合なら、お手伝いします。大丈夫ですよ。
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