「フチ様、薬師の所に連れて行けば いいのでは?」
ナツの提案で薬師の所に連れて行く事にした。
「平太様なので 大丈夫ですよ」
薬師の助手に男性を下ろしてもらい、治療をした後に事情を聞いて悪人なら役所に突き出すように言った時の薬師の返答だった。
へ、へいた!? この時代の平太様って嫌な予感がする。
「知っている人なら大丈夫ですね? じゃあ、お代を払って帰ります。この人の家族にでも迎えに来てもらってください」
そう言って急ぎ店を出た。
普通に平太と呼ばれるなら気にしないけれど、様がついていたので平家の太郎(長男)かもしれない。
この時代の平太って清盛だよね・・・
自分の現状も はっきりとわかっていないのに、関わる気は無い。
予感よ・・・はずれて・・・お願い・・・
そんな事を考えているうちに家に着いた。
「フチ様、タカコ様とハツ様がお呼びです」
家に帰るなりハツ姉様の侍女が呼びに来たのでタカコ様? の部屋に向かった。
「タカコ様って?」
部屋に向かう途中、ナツに聞いてみた。
「あっ!! そうでした。タカコ様は五条家当主の正妻でハツ様の お母様です。この家を取り仕切っている方です」
聞いていなければ、危ない所だった。でも、正妻・姉様の同時呼び出しって・・・ナツが虐められてると言ってたような気がするし、よくあるパターンだろうか? 行くの嫌だなぁ。
「フチ!! なぜ謝罪に行ったのに途中で帰ってきたのですか!!」
ハツ姉様の指示で帰ったのに・・・なぜか、継母様に怒られた。
「フチが勝手に帰ったから第五皇子の機嫌が悪くなって、帰らされたのよ。まったく、困った愚妹です!!」
おーい。こらーっ。ハツ姉様が帰れと言ったんだよね? 心の中で呟く。
「フチ、第5皇子は皇帝候補のひとり なのですよ? そこにハツが嫁いだら五条家としては・・・」
どうやら私が帰った後、第5皇子と上手く行かなかったみたいだ。
「その上、西市で源氏の部下と一悶着(ひともんちゃく)起こしたのでしょ? 源氏から確認に来たわよ!! 困った妾腹だこと!!」
西市での一悶着って、平太の件? 源氏って・・・やっぱり平家!?
「お母様、それはナツが起こしたのでしょ? 妾腹は所詮(しょせん)妾腹ですし、その側使いも駄目だと言う事ですよ」
「ハツが言う通りですね。フユ、ナツに罰を与えなさい!!」
継母様がフユと言う女性に指示を出すと、フユと言う女性はナツを木刀みたいなもので叩き始めた。
つづく