「ハツお姉様、おはようございます」
五条家の薬医門(やくいもん)前で待つ、ハツ姉様に挨拶をする。ちなみに、薬医門とは武家屋敷の門を想像すると わかりやすい。
「フチ、いつまで待たせるんですか? 早くしなさい!! それとも1日か、2日ほど食事を抜きにすれば、わかるのでしょうか?」
姉様、あまり早く行っても迷惑では? 第5皇子は逃げませんよ!!
だが、ここまで気合が入っているとは・・・食事抜き1回でも耐えられないのに、1日以上なんて失敗は出来ませんね。
「フチ、はやく乗りなさい!!」
ハツ姉様に急かされて馬車に乗る。
あれ? 馬車? 牛車じゃないの? もう歴史の事は考えないようにしよう。
「フチ・・・という事でお願いしますね」
馬車の中で、ハツ姉様に念を押される。
「ハツお姉様、わかりました」
簡単に言うと、第5皇子に謝罪をした後で適当に抜けて歩いて帰れという事だ。馬車に乗せてあげるだけでも感謝しろ!! らしい。まだ、姉妹関係がわからないから大人しくしておこう。
「では、降りますよ」
ハツ姉様に言われ降りると、目の前には大きな八脚門があった。本来、仁王像がある位置に兵士達が数人立っている。
さすが皇子様の屋敷だよね。
「殿下、先日は記憶が混乱していたとはいえ、失礼な言動を申し訳ありませんでした」
使用人に案内されて茶室に入り、第5皇子に謝罪をしている。
「私の方こそ、怪我をさせたのだ。すまなかった」
「殿下、愚妹の事は気になさらなくても・・・」
「フチ、記憶の方は、どうなのですか?」
第5皇子・・・今、ハツ姉様をスルーしたよね?
「頭を打った衝撃で、一部の記憶が消えてしまったようです」
姉様の視線が痛いが、ちゃんと答える。
「それは、また大変だな。お詫びとして何か困った時には私が助けるから、いつでも来なさい」
第5皇子・・・イケメン過ぎる。
「殿下、悪いのは馬車の前に飛び出した愚妹で・・・」
「ハツ!! 知らない子供を助ける為、馬車の前に飛び出すなんて素晴らしい事ですよ。簡単に、できる事ではありません!!」
第5皇子・・・そこはスルーしないのですか?
「殿下、散歩に行きませんか?」
姉様の視線が痛かったので、少し強引だが散歩に誘う。
「そうだね。ハツ、庭を歩こうか?」
空気を読んだ第5皇子が言った。
「喜んでお供します!!」
ハツ姉様が嬉しそうに答える。
第5皇子邸の庭を散歩する事になった。あとは、上手く抜け出せば食事抜きは無くなるはずだ。
つづく