「だから、戦った事が無いので無理です」
冒険者の荷物持ちはした事はあるが、戦った事は無い。
「大丈夫だ !! わしが教えてやる!!」
こいつ3000年も、ここにいたからボケているのだろうか? こんな素人に教えるなんて、何年かかると思ってるのだろう? しかも、こんな狭い場所で食料も無い・・・あっ!! 食料はあるな。
ダンジョンボスに勝てないと思った冒険者が俺を囮(おとり)に逃げたのだが、荷物は俺が持っている。その中に魔法の袋があり、その袋の中には食料が沢山入っている。
腹が減ったし、ダンジョンボスに見つかって 殺されるなら今のうちに食べておこう。
「お主、何をしてるのじゃ?」
「どうせ、ダンジョンボスを倒せないのだから 見つかる前に腹いっぱい食べておこうと思ってね。骸骨(がいこつ)系の魔物だから鼻が無いのでバレないと思うからね」
「なんと !! それは好都合!! 骸骨系の魔物なら、わしに触れた瞬間に魔法が無効化されるので楽に倒せるぞ!!」
アンデット系は基本魔法で動いている為、魔法を無効化する事によって倒せるらしい。素人の俺には一撃を入れるのが無理なんだが?
「さて、お主をどうやって鍛えるかが問題じゃな」
おいおい、本当で やる気かよ・・・ 折れちゃうぞ?
「まあ、それは置いといて食事が先だな。そうだ食事の会話に、お前の事を教えてよ」
「お前呼ばわりとは、馴れ馴れしくなったな」
どうせ死ぬんだし、朽ちかけた刀など怖くない。
「なぜ、俺みたいな戦えない奴を主人にしてまで戦いたいの?」
「わしは刀じゃぞ? ここで朽ちるなら戦いたいと思うのは普通じゃろ?」
「なるほどね。じゃあ、ここで前の主人が死んだんだね」
「そ、そうじゃ」
ん!? 今、動揺したような?
俺はわからない時もあるが、意外と相手の嘘がわかる。俺を囮にして逃げた冒険者も怪しかったのだが、上手く行けば報酬とは別に手渡しで給金をくれるという言葉に、ついつい魔が差したのだ。
冒険者組合の銀行通帳は孤児院に押さえられているが、手渡しなら取られないのである。
「俺に おとぎ話をしたのは、なぜ?」
「おとぎ話では無い!! わしは砕かれた夢という名の剣の一部だぞ!!」
「砕かれた剣は、それぞれの属性に砕かれたんだよね? 魔法無効化属性なんて無かったはずですか?」
「わしは、九の属性を束ねていた剣なのじゃ!! まぁ、今となっては残りかす じゃがの」
自称、九の属性を束ねていた剣らしい。
つづく