「さわがしいぞ!!」
帰ろうとする俺達の前に、筋骨 隆々(りゅうりゅう)の片足の無い男が杖を使いながら部屋に入ってきた。
「実は・・・・」
番頭がその男に近づいて経緯を説明している。帰りたいのだが、その男が扉の前に居る為に出られない。ぶっ飛ばしても いいのだが、俺は そこまで悪党ではない。
番頭に説明を受けた男が、俺達の方を向くと自動結界が起動した。攻撃された感じでは なかったので、解析の魔法類だと思う。これから先、こういう事もあると思うと・・・二人にも魔方陣を持たせるべきだな。
「今のは、君がやったのかね?」
男が言った。
「何を言ってるの? わからないけど?」
とりあえず、惚(とぼ)けておく。
「まぁ、いい。俺は、冒険者組合ゲンネ町支部長をしてる所長と言う者だ。先に言っておくが、所長は本名ではなく、あだ名だ。名前を教えても、みんなが所長と呼ぶから 所長と名乗る事にしたのだ」
部長なのに、所長? おっと、こういう効率よく考える奴はヤバイ。ただの筋肉馬鹿の可能性もあるが、気をつけねば。
「俺は遊ぶ人と書いて、ゆうじんだ。こっちが、たまご あっちが、あまいだ。挨拶も終わった事だし、帰らせて もらいたいのだが?」
「たまごです。さようなら」「あまいです。さようなら」
二人は、ちゃんと挨拶をしている。シーラちゃんの教育に感謝だな。
「待ちなさいって、言ってるでしょ?」
所長が来た途端(とたん)に、番頭が強く出て来た。彼女の中では強い人なのだろう・・・警戒しておこう。
「お前は何を言ってるんだ! 客人に失礼だろ!!」
「だって、例の三人ですよ?」
番頭が所長に怒られて言い訳をしている。
「うちの子が申し訳ない。まずは、座って話をしないか?」
「断る!!」
所長の話をはっきり断った。もう、面倒くさいし帰りたいんだよね。
「なに、偉そうに言ってるのよ? 所長! こういう奴は、ぶっ飛ばして話を聞かせた方がいいのでは? 女性二人が可哀想ですよ」
俺は、番頭に かなり嫌われているようだ。今度、隊員1に会ったら・・・
「ばかもーーーん!!」
所長が番頭の頭を拳で叩く。何処かで見た事のある光景だ。
「とりあえず、お前と商業組合の番頭は部屋から出て行け!!」
所長が、冒険者組合の番頭と組員1を追い出した。
つづく