「わっわわわーーーーームグッ」
たまごが、怪我防止用の柔らかい雪の壁に突っ込む。
「だからさー ビビッて、後ろに体重が かかるから速度が出るんだよ。前に体重をかけたら止まると言ってるだろ」
二人が2足歩行をするようになってから数週間が過ぎ、2月の上旬になっていた。
この数週間は、2足歩行の戦闘訓練から箸の持ち方まで 果ては料理に裁縫まで、たくさんの事をしていた。
戦闘訓練は4足歩行の延長上だからギクシャクしながらでも上手くなっている。二人は食べるのが大好きなので料理の腕も上手くなっているが裁縫だけは上手くならない。たまごは針で指先が血だらけになるし、あまいは猫を刺繍したつもりが、わけのわからない物になっていた。
訓練ばかりも可哀想なので、1m以上積もっている雪を魔法で山のように集めてスノボで滑って遊ぶ事にした。
「止まらないし、曲がれない」
たまごが言った。
「だから、曲がる時は曲がりたい方向を見れば自然に曲がるんだって」
「・・・・・」
「あまいを見ろよ。歩いた方が早い速度だが、うまく滑ってるだろ・・・あっ、コケた。たまごは速度の出し過ぎだな」
「これは、これで楽しいんだけど・・・ご主人様みたいに滑りたーい」
「壁にぶつかるのが?」
「ゴーーーーーといって、バーンと ぶつかるのが楽しんだよ。壁にぶつかっても痛くないからね」
たまご曰(いわ)く、壁にぶつかるのも楽しいらしい。
「グゥーーーーーー」
「もう昼か、今日の料理当番は どっちだっけ?」
「あまいちゃん」
「あまいかー・・・今日は運動したから肉が食べたいんだよな。あまいが下りて来るまで時間がかかるから、たまごが作ったら?」
「うーん・・・ そうだね、下りて来るまで もちそうもないし作ってくる。」
あまいは料理を覚えてから健康志向に目覚めて野菜を中心の料理が多い。たまごは逆に、大好きな肉を中心にした料理が多いのだ。
あまいが下りてきた時に料理は完成し 三人で食べて、また山で滑る事にした。
夕方になると二人は俺と同じくらいに滑れるようになっていた。
「飯にしようぜ」
「はーい」「わかりました」
風呂に入り食事をしていると、二人はウトウトしかけたので
「もう、ねなさい」
「じゃあ、いつもの」「やさしくしてね」
二人の毛並みを整えると寝床に入って行った。最近、抜け毛が多いんだけど 毛の生えかわりにしては時期が早いような?等と考えながら、俺も眠る事にした。
つづく