「ほな、行こか-」
花ちゃんが言った。
この3日間で元気になった花ちゃんを森の外の村まで送って行く事にしたのだ。3日間いろいろな話をしていた為、お互い気楽に話すようになった。
「あっ そうだ、この鋼鉄の剣3本と短剣1本に杖1本も置いていくよ。予備に持っていたけど使う予定もなくなったし重たいので・・・一応、高品質のいい物だぞ」
「また、いらない物の押し付けですか?」
「何言ってるか聞こえなーい。だって、重いし邪魔だし」
「聞こえてるよね?」
この3日間、このような会話を聞かされ続けた2匹はあきれながら聞いていた。
「私が渡した書付だけは失くさないようにね。では、しゅっぱーつ」
言いたいことだけ言われて出発した。花ちゃんの言う書付とは身分証を発行する時に役に立つらしい・・・使う時が来るのだろか?
出発して昼飯を食べ、いつもの狩場を越えても花ちゃんが襲われた場所につかない。
「おまえらー どんだけ遠くに遊びに来てるの?」
「いつも・・・・」
「たまたま、冒険しただけで・・・いつもは近くで遊んでいますよ」
たまごの言葉を遮(さえぎ)るように、あまいが言った。2匹は思っているより遠くに来てるみたいだ。
日が暮れかけた頃に、ようやく襲われた場所付近に着いた。こいつら弁当が無いからと言って、この距離を半日で行って帰って来るって・・・
「ご主人様」
あまいが警戒している。あまいに遅れたが、たまごも警戒し始めた。
「・・・・・・」
人の声が聞こえたような気がした。
「花さ・・・・」
声が近づいてきた。
「花さーん、どこですかー」
声がはっきりと聞こえた。
「もしかして捜索隊じゃね?」
「おー・・・・ムグッ」
花ちゃんの口を手でふさぐ。
「相手が誰かわからないのに大きな声を出すなよ」
「それも、そうだ」
「いたっ」
花ちゃんに指を噛まれた。
「遠くから様子を見よう。捜索隊だったら、ここでお別れだな」
養生中に花ちゃんから聞いたのだが俺に出会うまでに4ヶ月以上、森で迷っていたらしい。4ヶ月以上も連絡が途絶えていたのなら捜索隊が来ても おかしくはない。
「おっ あれは、うちの執事だよ」
花ちゃんが言った。
「大丈夫? トドメを刺しに来たんじゃないの? よくある話だよね・・・」
「うちの店は私がいないと回らないから殺される事はないよ。予定の日になっても帰ってこない事で店が回らなくなってきたから探しに来たんだと思うよ。」
大丈夫そうだ。
「じゃあ、ここでお別れだな」
「えっ!! 日も暮れかけている事だし一緒に野営しないの?」
「うん、基本的に人付き合いが嫌いなので自分から人がたくさん居る所には行きたくないんだよ」
「わかった。でも、その前に話があるんだけど・・・その玉鋼の剣を譲ってくれない?」
「こんな低品質の剣が欲しいの? あっ!! そのために剣を・・・」
低品質の剣は、いつ折れるか・・・と言われて、今日は鋼鉄の剣も持ってきていた。
「そう言う事ですが、いつ折れるかもと言うのも本当です。玉鋼の剣は、材料として売れば儲かるからね」
花ちゃんが難しそうな顔をして言った。
「それに、私の唇を奪った代金をもらってないし」
「ん?」
「たまごちゃんから聞きました。薬を口移しで飲ませてくれたそうで・・・」
「たーまーごーーーー」
「だってー 苦くて出来なかったから、あやまっただけだよー」
優しい たまごに言っても、しょうがないな。
「状況が状況だったしね。代金は、こんな剣でいいの?」
「わかっています。その剣が欲しいんですよ。出来れば2匹の短剣も欲しいのですが・・・」
「ガルルルー」「シャーーーァ」
たまごと あまいがその言葉を聞いた瞬間、花ちゃんに対して殺気のこもった声で威嚇を始めた。
つづく