日常生活に戻った私は、積極的に、周りの人間とコミュニケーションを取るようになり行動範囲もドンドンと広げて行った。

今迄は、偏りがちで、自分の興味の範囲でしか視野を広げようとはしなかったし、特に外部から受験で入ってきた同級生に対しての心の内は冷たかった、彼女らの描いた絵が余りにも描き込みが足りないと感じたし、結局は就職への踏み台程度の軽さを感じ、どの絵にも感情がなくて、つまらない、正直、才能が見て取れなかった。だから、表面がどんなにアーティスティックにサイケでも、ファツショナブルで格好良くても、影響力のない別世界の生き物扱いをし、どこかで区切りを付けていたのだから、冷たいと思われても仕方ない。多分、私を嫌ってた人多かったんじゃないかなぁ~。。。
いや、もっと単純な理由が根底にあった、学科の成績が悪かったはMは、外部から受験したのだが、見事落ち、別の短大へと進学した。Mが落ちたのだから、受かった人間は、凄腕だろうと期待した私は、彼女らのMの足元にも及ばない作品を見て怒りが治まらなかった。思えば、彼女達に何も怒りをぶつけられる筋合いは無かっただろう、迷惑な話だ。。。


話して、近づいてみると、魅力的な人間も多い、余計な拘りで一年を無駄にしてしまったと後悔した。


高校までは、公立で頑張ってバイトを重ね受験した子や、新幹線で通う子(家から二、三時間かけて通う子は当り前だった)、五度も芸大を受け落ちて仕方なく来た子、高校までは、進学校だったけど、どうしても絵の道に進みたくて、方向転換した子←このパターンが多かったな。割合良いって言われてる学校から、何でなのか多数来てる、、双葉、白百合、青山、大妻、学習院、、、皆、学校では浮いていたらしい。


浮いていたのは私もだ、二歳から絵画に触れる機会を貰い、小学生では既に、絵の世界に進むと決めていたので、中学では同校を受験する予定でいた。交通事故を起こし、断念せざる得なかった。公立の中学に進むのは、過程でしかなく、周りがくだらなく思えて適当に過ごして居た。中2の時には、先輩からもクラスからもひどいイジメを受けた。当時、校内でスカート丈はふくらはぎ位の長めが主流で、流行り初めたコギャルを見て、私も背が余り高くないから短くした方が脚が綺麗に見えるよな~と、鏡の前でああでもないと四苦八苦しながら調節して、自分のベスト丈、膝上15cmに自ら丈詰めをし、これも足が綺麗に見えるややルーズにした。たった是だけで、先輩に呼び出された。
「そんな文句言う前に真似してみたら?可愛いと思うけど」私のこの一言で、怒りをかったようだ。
クラスの女の子は、このやり取りを知って、引きまくり、同じ目に合いたくないと全員からシカトされ、担任からも休学するか?大丈夫か?と言われる程、質の悪いイジメは続いた。。。。

結局、3年に上がると、そんな先輩も消え、スカートを短くする子も増え、クラス変えと同時に個性的な友達が出来たので、イジメは無くなったのだけど、、本当にくだらなかった。ただ、親に話さなかったのにバレていたのか、父からは「我儘と自己主張や個性は違うんだよ。」とか「倫さんには謙虚さがない。自分に謙虚である事は成長に繋がるんだよ」などと言われていた。


今思うと、父の話した意味が良く解るし、私の押柄な所が、頑固と言うか何だか、ガキンチョだったなぁって笑えるんだけど。。。


そんなこんなで、生まれ月の春が過ぎ、教育実習の話が持ち上がった、学校の先生になるのが夢だった私は、その苦い思い出のある、中学校への実習を敢えて選んだ。。絵が好きな子ばかりに教えるのって、つまらない。と感じたからだ。母校を選んだのは、変わらぬ雰囲気に風を与えてやろうと思う悪戯心だ!!


実習は二週間、有り余って溢れていたエネルギーは全力で此処に注がれた。


先ずは、実習プログラム。
どんな事を課題にするか、考えるだけでワクワクした、あんなのこんなのと沢山の課題を持って担当者に会いに行って驚いた。私が在校中に習ったし、当時若かった彼は「君の絵にひかれたのか、女性としてひかれたのか解らないけど、二人で会ってみてくれないか?」と教師らしからぬ訳の解らない事を私に言い出した美術教師だった。暑苦しい外人顔が受け付けなくて、その時は断ったけれど、気がある事を良いことにその後大分、甘えさせて貰ったのが記憶にある。。。。
なら、余裕だ。心の中で舌を出した。やりたいようにやらせて貰える。。


突然の再会に、教師は大喜びで私を向かえ入れてくれた。持ち寄った、課題に感嘆の声を発しながらも、「残念だけど、難しいと思う。今の子達に、発想力を求めるのは無理だよ。引かれたレールの上をなぞる様にある程度までは、導きながらでないと。短期間だし無理しないほうがいい」と豪語した。ガッカリした。

そんなに難しい事ではないし、楽しんで貰えると思うんだけどなぁ。。と腑に落ちない気持ちをしまって、課題を考え直す事にした。職員室は変わらなく、懐かしい顔もチラホラ見えた。何となく、当時が甦ってきて皆に逢いたくて、椅子に座りながらぼんやりしていた。その間に、美術教師は受け持つクラスと学年全部の顔写真と名前をコピーし、あらゆる資料を用意し、「期待してるよ!楽しみだなぁ」と、私を見送った。その日はそのまま自宅に帰る気になれず、中学校時代の友人を呼び出した。留学中の千穂以外は、難なく捕まって、私を含む四人で話が盛り上がった。亜紀は、現役で芸大に受かり、ウキウキしていたし、バブル崩壊前に就職が決った佳奈と圭ちゃんも、OL・Lifeを満喫してるみたいで皆、綺麗になってキラキラしていた。話はつきる事なく盛り上がる一方で、クラス会をやる事までトントン拍子に決まってしまった。



それから、二週間後、私は広い体育館の舞台の上で、実習生代表の挨拶をした。天職かもしれないと浮かれた、全校生徒1000人の前で、思いをぶちまけたが、不思議と緊張もしないし、声は大きく響き渡り、スカーっとした。


問題の課題は、パッケージデザインで決めた。ギリギリのラインだったが、何とか押し切った。実習生は、国語の子が同級生で、数学二人が二学年上、英語は数十年先輩、化学が1つ上、って感じで、一緒の待機室を共有した。皆やる気満々だったから、楽しくて仕方なかった。

私が、母校で実習し帰る頃には、例の友人と集まり、クラス会の準備、、圭の家で電話しまくって、人数は着々と増えていく。亜紀のママが開いた小さなスナックを貸し切りにさせて貰える事も決まり、クラス会はその週の日曜日へと迫っていた。


この頃、私は引っ越しをして一人だけ皆と一つ駅の離れた場所で住んでいた。
とは言っても近所なのには変わり無いし、学生とは違う風を運んでくれる友達や、私と同じ世界ながら、別の刺激を与えてくれる友人たちとの時間はブランクを埋めるのに必死に成る程楽しくて時間が足りず、夜中迄遊んでも又逢いたくなる。両親は、そんな私を束縛しようとした。門限11時とか、1分でも過ぎたら家に入れて貰え無かった。私は苛立ちを押さえられず、何度も門限を破ったし、夜中に遊んで駄目なら、一旦帰宅して数時間後早朝なら文句無いでしょ?とむきになって何度も同じ事を繰り返した。両親は、質の悪い友達と付き合いが再会したと嘆き、この言葉に元々あった父、母への不満、は爆発寸前だった。。。


そんな最中に、クラス会は予定通り行われた。

久し振りに会うクラスメイトは、本当に19才?って疑うぐらい禿げた子も太った子も居たけれど、働きだして大人っぽく見える子や、受験に成功して楽しくて仕方がないといった子も多く、一気に盛り上がった。


私は、幹事が上手く行ってホッとしカウンターで、数人と語っていた。ジャニーズ張りに格好良くてモテた三人の男の子達だ。当時はCoolだった彼らも角が取れて、はしゃいで喋りまくっていた。私が、実習に行ってて話すネタ切れで困ってると話すと、必死になって話せもしない下ネタを仕込んでくる。話が本当とまらなくて、お開きになった後も、奴らと、片付けをした。
「花火やろーぜ」
啓太が言った。皆で、子供みたく夜中にやる花火は綺麗で時を戻すかの様でうっとりした。私は、小学生の時から一緒の海と花火をグルングルン回しながら走りまくった。海は、夜勤明けで寝てないからと酔っ払って、花火代だと一万を私にくれて、しばらくしたら眠ってしまった。綺麗な顔だなぁ。背、高くなったなぁ~、脚こんなに長かったかな?小さい時から知っている彼が、働きだして、大人の男性に変わった様で別人の様に輝いて見えた。彼は、私と違って、親の力で生活していない。自分に責任をちゃんと持てるのだ。色々な男の子と付き合ったりしたけど、こんなタイプの人は居なかったなぁ、、皆ボンボンで、親の力に頼ってた。
帰らないと今度こそ、面倒になりそうだったので、いつもの様に一旦帰宅して、朝方、又彼らと落ち合う約束をした。正直、可成グッタリしていたけれど、この感情が恋愛から来るものなのか、単に刺激を受けてドキドキしただけなのか見極めたかった。



朝方、待ち合わせのデニーズに着いて、一番後ろの席から両手を広げ、私を迎えてくれた海の笑顔を目にした途端、これだ!!私は、彼と再会する為に今迄の過程を過ごしていたんだ。。

海が好きだ。。

実習でこっちに戻ったのも運命だったんだ!

席に着こうとゆっくり歩きだすと、何だか知らないけど、涙が出た。まるで長い事逢えないでいた人と、やっと逢うことが出来た瞬間みたいに。。。

周りが騒ついた、「倫?どうした?パパに叱られたの?」違うと頭だけ振って、答える中々声が出ない。あんなに大勢の前で堂々と話が出来るのに。。皆が心配そうにして声をかけてくれるけれど、声が出ない。


立ったまま席に座れないで泣いている私を店員も不思議そうに見ている中で、海が言った。。


「分かったよ!倫!付き合おう!俺、倫の事好きになったみたいだ。幸せにしてやりたいって思った。倫もそうなんだろ?」

驚いた、全く同じ気持ちでいてくれた?いつ?信じられない。。

なんだ、そういう事だったんだ。と皆が、笑ってくれて、何とか席に着く事が出来た。啓太は「いつの間に?何だよ、上手くやっちゃってオレには何かないの?」と冷やかしたけど、いつの間に?って私が聞きたいよ。。不思議な感覚のままでいた。



海と私はその後10年一緒にに過ごす事になった。
沢山の犠牲者と邪悪な時間二人で、地獄を見ることになる。この時はお互いが幸せで楽しくて仕方がないくらいだったのに。。。