歳時記によれば昼間は霞、日が落ちてからは朧と呼び、
東の空に満月が昇った日、愛犬のトランプが死んだ。
ミニチュアシュナウザー13歳10ヶ月、
私たちと一緒に過ごした短くも長い年月だった。
濃い青の目をし、眼差しはいつも家族に向けられた。
甘えたい時は鼻先を家人の脇の下にもぐらせ、おねだりをして膝の上に乗る。
散歩に行きたい時は玄関のドアーの前に頭を垂れて待っていた。
雨が降って外に出られない時はドアーを開けて雨の降っている様子を見せると、
背を丸くしてあてがわれた自分の場所に静かに戻った。
家族の側にいるのが一番好きで誰彼となく甘えた。
散歩へ出て可愛い犬ネ!と声をかけられると頭を垂れて撫でてもらう事をねだった。
度々訪れる地震が一番怖く、体を小刻みに震わせ、家人の側でうずくまった。
長い髪の毛が夏はとても辛そうで、昼間は濡れたタオルを背中にかけ、
陽の差し込まない風通しの良い玄関の土間で休み、夜中に散歩へ出た。
漆黒の闇の中でトランプの青い目が光っていた。
物言わぬでも、すばやく人の表情を読み取りタイミングを
心得ての彼の行動には学ぶ事が多かった。
頑固ではあるが聡明で従順だった。
見事に咲いて散った桜の花の後、
パンジー・テッセン・薔薇が咲き、
樹木の若葉の香りが咽ぶ庭に、今眠っている。
