日本MMA最後の砦ともいわれていた日沖選手が、UFC137で米国のMMAのリングに初登場しました。

小見川選手など、期待されていた日本人選手がUFCを含む米国MMAの舞台で苦杯を飲むんでいる中で、日本の格闘技ファンの日沖選手に寄せる期待は大きかったと思います。

日沖選手のUFCデビュー戦の相手は、ジョージ・ループ選手。UFCでは、中堅どころに位置するファイターかもしれませんが、最近の戦績をみると決して侮れる相手ではなく、強豪ともいえるかもしれません。

日沖選手は、ループ選手に僅差ながらも2-1の判定勝ちを収めました。

ファンが期待していたような、すっきりとする勝利とはいきませんでしたし、金網への適応性などに対して厳しい意見もあるようですが、まずはUFCのデビュー戦を取ったというのは非常に価値のあることだと思います。

色々と課題の見つかった試合でしたが、それらは逆に発見としてポジティブに捉えることも出来ますし、何よりデビュー戦ではまず勝つことが大事でした。

特に、あのような僅差の中でものにした、ある意味アウェーの環境でのデビュー戦の勝利は、今後に活きるはずです。

また、今回の自分より身長の高い選手との対戦というのは、日沖選手にとって初のUFCという以外の面での新たな挑戦であったと思います。

おそらく日沖選手は、今までの自分より背丈のある選手と試合をしたことはないのではないでしょうか。

頻繁に自身の身長を活かして、覆いかぶさるかたちでテイクダウンを奪取する日沖選手にとって、今回の試合は相手の方が身長が高いという部分で、攻め手が制限されたかたちになったと思います。

UFCデビュー、そして自身より高身長の選手との初対戦という、プレッシャーのかかった中で、よくぞ勝利を挙げたと思います。

一方で、課題は肘での攻撃と、何といっても金網際でのテイクダウンでしょう。

日沖選手に肘の攻撃のバリエーションが加われば、グラウンドで上になった状態で、更に有利に試合を進められるようになるでしょう。また、リングと違い、金網が体を支えてしまうオクタゴンでは、金網際でのテイクダウンが取りにくくなります。

これらは米国に拠点を移しての、練習環境からではないと、習得しにくい部分かもしれません。

日沖選手はインタビューにも英語で答えています。

これは、日沖選手が米国に活動拠点を移すことの準備と決意の表れなのかもしれません。

また、日沖選手が初白星を掲げたUFCの今大会で、2人の偉大なファイターが引退を表明しました。

ミルコ選手、BJペン選手ともに、負けたら、いや勝っても試合内容によっては引退をすることを心に決めて臨んだ試合だったと思います。

それがミルコ選手の試合内容にも表れており、近年の試合と比較して、KOでの勝利への姿勢が強くみられました。キレのある左ハイも見せました。ただ、やはり全体的にキックの数が少なかったですし、ローキックも一発も放たなかったような気がします。

単発の左ハイでは、相手に読まれてしまうのですが、他の場所にキックを散らせる余裕がないほど、左足に限界が来ていたのかもしれません。

最後は心身共に、何かが切れてしまったかのように、相手のネルソン選手にTKO負けを喫しました。

BJ選手もボクシングを得意とするディアス選手に果敢に打ち合いを挑みました。ディアス選手は腰があまり強くないので、寝技の展開に持ちもむなど、もう少し他の戦い方もあったかもしれません。

BJ選手の中で、ディアス選手と打ちあって勝てないのであれば、もうこれ以上UFCの一線でやる意味がないと思ったのでしょうか。

最後は判定まで粘ったものの、ディアス選手に顔を腫らしての判定負けを喫しました。

それにしてもディアス選手も強かったと思います。ボクシングにも定評のあるBJ選手をあそこまで一方的に追い込むほどの、ディアス選手のMMAにおける独特のボクシングテクニックは脅威です。

GSP選手との2月に対戦することも決まったようですし、相性は悪いかもしれませんが、現在GSP選手を倒せる幻想を抱かせるウェルター級のファイターはニック・ディアス選手を他に差し置いてはいないでしょう。

今回で引退を表明したミルコ選手と、BJ選手ですが、間違いなく両名ともに格闘技史に名を刻んだ偉大なファイターです。

本当にお疲れ様でした。