先週の土曜日にK-1 GP 2010 Finalを会場観戦してきました。

優勝こそ逃しましたが、2010年のK-1決勝ラウンドの主人公の座はピーター・アーツ選手が持っていきました。これに関しては、多くの人が同意見だと思います。

今年で40歳という年齢にも関わらず、長らくK-1の第一線で戦い続けているアーツ選手に思い入れのあるファンは多いと思いますが、決勝ラウンド1回戦のアーツ選手VSモー選手の煽りVで、今大会のアーツ選手に対して更に感情移入してしまったファンは多かったと思います。

今大会のハイライトは、何といってもアーツ選手VSシュルト選手だったと思います。アーツ選手の見せた“人間力”の部分に胸が熱くなりました。

アーツ選手が今回シュルト選手を下したことは、本当に凄いことだと思います。改めてアーツ選手の偉大さを感じました。

さらにいうと、シュルト選手は韓国大会でのホンマン選手との不可解な判定を除いては、K-1の試合でアーツ選手以外には負けていません。

今のところ、K-1のリングでシュルト選手を倒した選手はアーツ選手しかいないのです。

アーツ選手は過去のトーナメントではダメージの蓄積などもあり、シュルト選手に2敗していますが、ワンマッチでは一度も負けていません。

2008年の大会で「シュルト選手が王者のままではK-1がつまらなくなる」とアーツ選手がシュルト選手との対戦を直訴したのは記憶にまだ新しいところでしょうか。アーツ選手が「シュルト選手には絶対に勝つ。」と心に決めた試合では、必ずシュルト選手に勝利しています。

今大会でもアーツ選手は、勝ち上がればシュルト選手と対戦することになることを想定していたと思います。

試合後のインタビューでもアーツ選手は「今回はシュルトに勝つことが一番大事なことでした。」「彼はチャンピオンだし、みんなが一番強いと言うからです。」と語っています。

アーツ選手は今までシュルト選手を倒して来たときと同様に、必ず勝たなくてはという強い意志を持ち、見事にそれを今大会でも成し遂げました。

アーツ選手が今大会で、シュルト選手に勝った要因は大きく分けると3つあると思います。

1つ目はアーツ選手の自信です。アーツ選手は過去2度のシュルト選手とのワンマッチではいずれも勝利しています。今大会の一回戦でアーツ選手は、ほぼ無傷でモー選手に勝利して準決勝に勝ち上がりました。

ワンマッチのような万全の状態でシュルト選手との対戦に臨めるということで、過去の勝利経験から来る自信がアーツ選手の気持ちを後押しした部分があると思います。

2つ目は勝ち方に拘っていなかったことです。どんなに泥臭くとも不格好でも良いから、とにかく勝つことへの執念がアーツ選手には見られました。特にKOも狙ってはいなかったと思います。昨年のバダ・ハリ選手はKOを狙いすぎてシュルト選手に返り討ちにあってしまったような印象もあります。

アーツ選手には、距離をつめて相打ちになっても一発でも多く自分のパンチとキックをシュルト選手に試合終了まで叩き込むというがむしゃらさを感じました。

そして3つ目ですが今大会で首相撲からの膝蹴りが禁止されたことです。これが一番大きな要素かもしれません。シュルト選手は長身であるが故に、懐に潜り込まれると弱いと指摘されています。

ただ、シュルト選手の首相撲からの膝蹴りが相手に致命傷を与える凶器となるほど強力なので、うかつに相手は懐に飛び込めないのです。

今大会から掴んでの膝蹴りが禁止されたことになり、アーツ選手のように前に出られるファイターにとって、シュルト選手の懐に入りやすくなりました。シュルト選手に対して距離を詰めることのリスクが軽減されたことで、顔面へのパンチも当て易かったのかもしれません。


ただ、いくら首相撲からの膝蹴りが禁止されたとはいえ、シュルト選手がどのファイターにとっても脅威の存在であることに変わりはなく、今大会でアーツ選手がシュルト選手を倒したことは偉業といえると思います。

今までアーツ選手しかK-1でまともにシュルト選手を倒していないという事実が、その凄さを物語っています。

今大会のアーツ選手の体の仕上がり具合からも、もしかしたら最後になるかもしれない今回のトーナメントへの強い意気込みを感じました。

シュルト選手の打撃に顔を腫らしながら前進する姿には、ただただ感動を覚えるばかりでした。

アーツ選手のトーナメントへの出場は今回が最後になる可能性はありますが、引退するのはもう少し先になるようです。

ワンマッチでのアリスター選手へのリベンジを望むのは、アーツ選手にとって酷なことであり、ファンの我がままでしょうか?