今年のK-1は試練の年となりましたね。

K-1 MAXは魔裟斗選手が引退を発表してから、「一般層に訴求出来る選手がいなくなったらどうするの?」という不安が以前から囁かれていました。それに追い打ちをかけるように、K-1ヘビー級もスター候補のバダ・ハリ選手の欠場。そしてそのバダ・ハリ選手欠場の穴を埋めようと呼んだ元UFCヘビー級王者アルロフスキー選手のまさかの土壇場での欠場。

バンナ選手も延長戦を受け入れずに試合放棄をしてしまったり、シュルト選手も勝利した相手のカラケス選手に訴えられていたりと、今年のK-1は何かと困難が続きます。

敢えて今年のスター不在のK-1をポジティブに捉えると、“純勝負論”で試合を観戦出来るといったところでしょうか。

K-1ヘビー級、K-1 Maxともに、主催者側の“勝って欲しい”という選手が存在しない状況です。作為的な組み合わせも判定も決勝ラウンドでは無いでしょう。(比較的知名度のあるバンナ選手や、キシェンコ選手は既にリザーブマッチに出場をオファーされているかもしれませんが。。)

楽しみな選手も出て来ています。以前からローキックのキレには定評のあったギダ選手が、実力者のジマーマン選手からド派手なKO勝ちを収めました。

決め手となったカウンターのパンチは、やや偶然的にタイミングが合ってしまったようにも見えましたが、それまでに見せたローキックのキレは健在でした。

今年のK-1ヘビー級の決勝ラウンドでは、シュルト選手VSアリスター選手が実現するのではないかというのが一つの楽しみでしたが、この両選手にギダ選手がどのように絡んでくるのかがもう一つの楽しみになりました。

K-1 Maxの方も、唯一といっても良い程ファンからの注目度の高い、前年度王者のペトロシアン選手が盤石の強さを見せつけました。

ペトロシアン選手が勝つであろうということは主催者も含め大方が予想していたであろうことだと思いますが、キシェンコ選手が敗退してしまった中で、ペトロシアン選手が勝ってくれて主催者は胸を撫で下ろしていると思います。

ペトロシアン選手の精密機械のような戦い振りは格闘技ファンの胸に響いたようですし、主催者側としてもここまで安定的に勝ってくれる選手ということで、非常にプッシュのしやすい選手なのかもしれません。

ただ、ペトロシアン選手は強さは申し分ないのですが、一つだけ不安があります。それはペトロシアン選手の強さが、一般層には伝わりにくいということです。

ペトロシアン選手は勝つために無茶をしません。ここでいう無茶とは、例えばKOを狙いにいく姿勢です。

ペトロシアン選手の実力はもちろん申し分ないので、今後相手選手をKOすることも多々あると思います。ただ、それはあくまで流れの中でKOするのであって、ペトロシアン選手自身はKOや派手な戦い方に執着はないように見えます。

ペトロシアン選手にとって重要なことは結果であって、KOか判定かの過程は彼の美学の中で、さほど重要なことではないのかもしれません。

派手な戦い方をしないペトロシアン選手だからこそ、今後長期政権を築く可能性もあります。長期政権を築いても、分かりやすい試合をする選手であれば、主催者側も万々歳です。

ただし、ペトロシアン選手のような、ある意味玄人受けする選手が長期政権を築くとなると、対戦相手が見つからなく、且つ見つかっても試合が玄人向け過ぎるというジレンマに陥ってしまう不安があります。

これからK-1 Maxの看板をペトロシアン選手が背負っていくに連れて、“魅せる試合”というものも求められて来ると思います。

まだペトロシアン選手は底を見せていない印象もあるので、そういったものを求められて来たときに、どのような試合を見せてくれるのかに期待したいと思います。