昨日のDREAM16をPPV観戦しました。

全体を通して、ややインパクトに欠ける大会だったと思います。良い試合がなかった訳ではないのですが、特にどれも大会ベストバウトといえる程のインパクトは残せなかったと思います。

あまり印象深くない大会となった理由としては、普通に勝つと予想されていた選手が、全員普通に勝ってしまったことが大きいと思います。勝つべき選手が勝ったという部分では、悪くなかったのかもしれません。

そんな大会の中でも試合数の多かったフェザー級の試合で強さを感じさせたのは、小見川選手でした。今まで打撃で主導権を取る展開の多かった小見川選手ですが、今回の試合では新たな面も見せてくれました。

エスコベト選手を相手に下になった状態から自身の首を利用してのアームバーで一本勝ち。小見川選手はあらゆる局面でも極める力があることを実証しました。海外のトップファイターとの試合を早く見てみたいと感じました。

高谷選手も持ち味を発揮しての勝利でした。得意のパンチでのKO勝ちも見事でしたが、相手のビービー選手が少し悪い負の連鎖に陥っているようにも感じました。DREAMではまだ勝ち星のない、ビービー選手を相手に、高谷選手が手堅くも、しっかりとKO勝ちを収めたという印象です。

他のフェザー級の試合では、相手を終始グラウンドで抑えつけて判定で勝利をものにする“塩漬け”とも呼ばれる、格闘技ファンからあまり歓迎されない戦い方をする石田選手と宮田選手も、その戦法で手堅く勝利をものにしました。

石田選手に負けてしまったウィッキー選手ですが、完全にタックルに入られるようなシーンはなく、そのタックルを防ぐ技術にアメリカ修行の成果も見られました。石田選手のタックルを防ぎながらも、常に攻撃のチャンスを伺い、隙あらばKOを狙う姿勢が見れました。定評のある石田選手のタックルをあそこまで防ぐ身体能力の高さも魅力に映りました。今後が楽しみな選手です。

一方で宮田選手と戦ったリオン選手は、宮田選手の手堅い戦い方に完封されてしまいました。その手堅い強さから、どの選手も対戦するのを嫌がるといわれている宮田選手ですが、確かにその戦法と手堅さは安定していると思います。

ただ、やはりプロという部分では、もう少し観客を沸かせる部分を見せても良いかと思いました。所選手のように、今回はハンセン選手に敗れましたが、勝っても負けても常に激しい試合をすることを心掛ける意識を少しでも持つことが出来れば、もっと人気も上がるかもしれません。

宮田選手の試合後の、「全部判定勝ちになるかもしれないけど、フェザー級なら誰とやっても勝てる自信がある。」という発言が少し気になりました。


また、フェザー級以外の試合では、桜庭選手がとうとう一本負けを許してしまいました。桜庭選手がタップするシーンを見るのは、少し寂しい印象もありましたが、リアルファイトの舞台で、しっかりと現実の部分が出た試合だと思います。

今回、桜庭選手から一本を奪ったメイヘム選手は、桜庭選手に憧れ続けていた選手です。メイヘム選手のデビュー戦は2001年、丁度桜庭選手がホイラー選手、ホイス選手、ヘンゾ選手、そしてハイアン選手を破ってグレイシーハンターの名を欲しいままにした少し後の頃でしょうか。

メイヘム選手は憧れ続けていた桜庭選手からの一本勝ちに感極まっていました。桜庭和志という選手を世に知らしめたPRIDE創設から数えて、桜庭選手の初の一本負け。いつかは一本で負ける時が避けられないのであれば、その相手がメイヘム選手で良かったのかもしれません。


今回、期待しているからこそ、敢えて苦言を呈したいのが石井慧選手です。急遽決まった試合なので、何かと準備出来ていなかった部分はあるのかもしれませんが、MMAの選手としての意識があまり強く見られませんでした。

相手はミノワマン選手でした。ミノワマン選手が相手だからこそ、石井選手には今回は打撃で行って欲しかったというのが正直なところです。

ミノワマン選手は、キャリアも実績もある選手ですが、怖い打撃を持っている選手ではありません。い20Kgの体重差と柔道での実績の考慮すれば、石井選手はミノワマン選手のテイクダウンも恐れる必要はなかったと思います。

その中で、石井選手は自身の柔道のバックボーンを活かす戦法を選び、手堅く勝ちを狙いにいきました。

もちろんMMAという競技の中での寝技の進化は見られましたが、今後石井選手がMMAの選手として大成していくために一番ネックとなってくるのは打撃の部分だと思います。

どんな手段でもまずは勝ちにいくということは大事なのですが、打撃でいっても大きなリスクはなかったミノワマン選手には、石井選手に打撃で勝負して欲しかったです。自身の打撃の進化を試すのには、ミノワマン選手は良い相手だったのではないでしょうか。

今回石井選手はミノワマン選手に勝利しましたが、MMAで勝ったというよりは、体格差と柔道の貯金で勝ったという印象を受けました。

最近石井選手は、米国の柔道代表選手としてオリンピックに出場したいという発言もしています。

MMAの選手として60億分の1を目指したいと言っていた石井選手の意識にブレが生じていないか、少々心配です。