5R判定 3-0。(50-45,50-45,50-45)

フルマークでのギルバート・メレンデス選手の判定勝ち。

青木真也選手のアメリカ初挑戦は完敗という結果に終わりました。

ストライクフォースというアメリカのメジャー団体に、日本のメジャー団体の王者が出場するということで、この一戦は日本の格闘技ファンの注目を集めるとともに、多くの期待が寄せられていました。

青木選手が負けてしまったという事実もさながら、完封されての敗戦ということで、期待していたファンに与えた焦燥感は非常に大きなものでした。


ただ、私は青木選手とメレンデス選手、両者の格闘家としての能力そのものに、そこまで差があるとは思いませんでした。フィジカルの差もあまり感じませんでした。

既に言われている通り、両者の明暗を分けたのは、戦い方・戦略の部分だったと思います。

バックボーンとなる格闘技が大きく異なる格闘家がMMAで戦う場合、その戦略は大きく二つに分かれると思います。

“自分のフィールドに相手を持ち込むこと”そして、“相手のフィールドに持ち込まれることを防ぐこと”です。

今回の対戦でメレンデス選手は、“相手のフィールドに持ち込まれることを防ぐこと”を徹底的に実践しました。積極的に攻めて青木選手の牙城を崩したというよりは、青木選手の土壌に足を踏み入れないことで、結果として勝ちを手にしたという印象です。

特に寝技ベースの選手と打撃選手の対戦となる場合、寝技系の選手は“自分のフィールドに相手を持ち込むこと”をせざるを得ないのですが、実力が拮抗している場合は“相手のフィールドに持ち込まれることを防ぐこと”よりも“自分のフィールドに相手を持ち込むこと”の方が大きく困難になって来ます。

そういった部分では、今回の青木選手の戦いぶりを見ると、“自分のフィールドに相手を持ち込むこと”をするための戦略が不足していたのかもしれません。もしくは、それを実行するための打撃のスキルや、タックルの技術などが足りなかったのかもしれません。

メレンデス選手の方が金網での戦い方に慣れているため、金網際をうまく利用して、“相手のフィールドに持ち込まれることを防ぐ”戦い方、青木選手にグラウンドへ持ち込まれるのを防ぐ戦い方をしてくるのは試合前に容易に想像出来ました。

それに対する、青木選手側の対策は不足していたのかもしれませんし、そこにメレンデス選手の実力を低く見積もっていた、青木選手の過信もあったかもしれません。



この青木選手の敗戦を受けて、青木選手を明からさまに批判するような声も一部見られます。

その中で、前回UFCに初挑戦して敗北を喫した五味選手と比較し、試合として攻防が成り立っていた五味選手の方がまだマシ、五味選手の方が上という意見も見られましたが、それは少し違うと思います。

五味選手は自身のフィールドであるスタンドでの打撃戦を展開した中で、ほぼ完封されて敗北を喫しました。

今回の青木選手の場合、相手が寝技系の選手で、寝技の展開になったうえで何も出来ずに負けたのであれば、五味選手よりも劣るという見方も出来るかもしれません。ただ、今回の青木選手の相手は寝技系の選手ではありませんでした。

なので、五味選手の敗戦内容と比較して、青木選手の敗戦内容をそれ以下とするのは誤りかと思います。


今回の日本メジャー団体DREAMの王者である青木選手の敗戦によって、日本の格闘技のレベルを下に見られてしまったかもしれません。格闘技マーケットという視点でみた際に、現時点で日本がアメリカに劣っているのも事実です。

ただ、青木選手はここから這い上がるような気がします。青木選手はこの試合後に、「今はメレンデス選手と再戦したいとか言える立場じゃない。これからまた奮起して、メレンデス選手の方から戦いたいといって貰えるような選手になりたい。」というような発言をしています。これは自身の足りなかった部分を認めた上で、過去の栄光にしがみつくことなく、またゼロからスタートしてやるという意思表示にも見えます。

もしかすると青木選手には、アメリカのジムに出稽古に行くなど、更に強くなるためには練習環境を変えることも迫られるかもしれません。

青木選手は試合後に「リングとケージの差は取るに足らないと思う。」とも、発言しています。一見突拍子もない発言にも聞こえますが、もしかすると今回初めてケージで試合をした中で、何か光が見えたのかもしれません。