10月6日に行われたDREAM11。

DREAM11ではフェザー級グランプリが思わぬ盛り上がりを見せました。DREAMのフェザー級グランプリは、今まで中々主催者の思惑通りにことが進んでいませんでした。グランプリ一回戦はほとんどの試合が判定決着、そして内容的にもやや退屈な試合が多く続いてしまい、その先行きを不安視させるものでした。グランプリ二回線では、起爆剤となるべく山本KID選手が登場しましたが、よもやまさかの判定負け。おそらく元々は山本KID選手をDREAMの顔として売り出すためのフェザー級グランプリでしたが、その狙いとは裏腹に山本KID選手は参戦早々にして姿を消してしまい、その後のテーマを欠くグランプリとなってしまいました。このときの唯一の救いが一回戦で敗退したものの、二回戦へ繰り上げ出場が決まり、その試合できっちりと一本勝ちを収めた所選手。フェザー級グランプリの焦点は所選手へと集中しました。その時点での主催者の希望としては、所選手に優勝してもらい、大晦日に山本KID選手との対戦という流れだったと思います。

準決勝で所選手VS高谷選手が決まった際には、「所選手は決勝に行けるのでは?」と思っていました。高谷選手は今まで須藤選手とも試合をしたりしていますが、比較的打撃系の相手と試合をしている印象が多く、あそこまでタックルへの耐久性やグラウンドから立ち上がるのに秀でた能力があるとは思いませんでした。所選手のテイクダウンを尽く防いだ高谷選手は、一度は所選手のパンチでピンチに陥るシーンも見られましたが、最後はきっちりとパウンドで所選手を仕留めました。前回の前田選手との試合でもそうでしたが、高谷選手は非常に勝負勘の良い選手だと思います。試合の中で数回訪れる勝負を決める僅かなチャンスを見逃さずに、その場面になると一気に畳掛けます。その結果が、前回の前田選手との試合、そして今回の所選手との試合での逆転勝ちに結びついていると思います。



もう一方のフェザー級GP準決勝のビビアーノ選手VSウォーレン選手は、ビビアーノ選手が下からの腕ひしぎ逆十字を極めて一瞬で勝負がついてしまいました。短時間で勝負がついてしまったことでビビアーノ選手に十分なスタミナが残されていたこと、そして身体能力でもビビアーノ選手が優れているという印象から、高谷選手にとって厳しい決勝戦になることが想定されました。準決勝で消耗した高谷選手が一方的に攻められて負けてしまうのかと思っていましたが、決勝戦でもビビアーノ選手のグラップリングを尽く防ぎ、改めてタックルや寝技への耐久性の高さを見せつけました。僅差の判定で敗れはしたものの、高谷選手の戦いっぷりは見事でした。今までDREAMのフェザー級では山本KID選手と所選手以外では目立ったトピックスがありませんでしたが、ここに今大会存在感を示した高谷選手が加わることで今後の良いスパイスとなりそうです。


ライト級タイトルマッチでは青木真也選手がヨアキム・ハンセン選手を下し、DREAM初の日本人王者としてライト級のベルトを巻きました。この試合内容に関して退屈であったという批判的な意見もありますが、青木選手は金的を受けた直後の頭部への蹴りで意識が飛んでいたようです。それを考慮すると致し方ない部分もあるかと思います。何としてでも勝ちたいという想いもあったでしょうし、DREAMに参戦してから今まで経験したことのないグラウンド状態での打撃によるKO負けも喫しています。そういった部分でも慎重にならざるを得なかったかもしれません。一方でレフリングに関しても疑問視する声が飛んでいます。これは今回のみならず以前も問題になったことがありました。青木選手のみならず、選手は不可解なレフリングを決して望んでいるわけではないので、あからさまに主催者の思惑で勝敗が左右されていると疑われるようなレフリングは是正して欲しいところです。いずれにせよ残り時間僅か4秒といったところでもきっちりと一本を極めた部分に関しては、青木選手の一本勝ちに拘る姿勢と勝利への執念が垣間見えました。見事な一本勝ちであったと思います。



ライト級では川尻選手が青木選手に対戦表明をしています。青木選手が答えを保留しているため、この試合が大晦日に実現するかどうかは定かではありませんが、選手としては青木選手の方が一枚上手という印象を持っています。川尻選手は真っ向から打ち合いを挑むなど、プロ格闘家として非常に意識の高い選手だと思います。男臭さからくる色気も持ち合わせており、川尻選手を応援するファンは多いと思います。ただどうしても川尻選手は負ける試合ではベストバウトを連発するものの、勝つ試合ではやや膠着気味の判定勝ちが多いのが事実です。今回のバラクーダ選手のように、ある程度実力差のある相手であれば一本やKOで勝てるのですが、実力が拮抗してくると勝てても動きの少ない試合となってしまう傾向があります。原因としてはこれぞという武器になる技がないのが一つとして考えられます。打撃もグラウンドも高いスキルを持っているのですが、絶対的な極めれる技を持っていないのです。強靭なフィジカルは一つの大きな武器ですが、パワーは特に階級がある中では、技によって防がれてしまいます。泥試合の中でもきっちり一本を取ってハンセン選手から勝利を挙げた青木選手とは、その部分で差が出てしまうかもしれません。一方でライト級では大晦日に菊野選手が川尻選手との対戦を希望しています。菊野選手も相手をKO出来る、これぞという武器を持っている選手です。この対戦が実現した場合、今までDREAM、そして日本総合格闘技のライト級を盛り上げてきた川尻選手への思い入れは大きいのですが、負けてしまうのではないかという不安が過ぎるのも正直なところです。