現地日時7月11日にアメリカ・ラスベガスのマンダレイベイにて行われたUFC100。100回目の大会ということで、豪華カードが目白押しの大会となりました。

ブロック・レスナー選手VSフランク・ミア選手のヘビー級王座統一マッチ、ジョルジュ・サンピエール(GSP)選手VSチアゴ・アウベス選手のウェルター級タイトルマッチなど、世界中から注目が集まるカードが並びました。

これらの試合はもちろん日本の格闘技ファンの関心を集めていましたが、日本の格闘技ファンの中では、やはり秋山成勲選手のUFC初試合の結果が一番気になったという方も多いと思います。

UFC100で記念すべきUFC初参戦を果たした秋山選手ですが、その初戦を見事勝利で飾りました。試合の方は1Rで相手のベンチャー選手の左のロングフックが当たり尻餅をつくシーンや、金的を受けてしまい一時試合が中断するなど雲行きが怪しくなる場面もありました。1Rはベンチャー選手に取られた印象でしたが、2Rになると秋山選手が上のポジションを取ったりと攻勢に出ました。ベンチャー選手はリーチが長いため、遠い距離からの打撃を有効にヒットさせるシーンもありましたが、近い距離での打ち合いでは秋山選手の気持ちの強さも相まって秋山選手の打撃がベンチャー選手の顔面を捉えるシーンも目立ちました。3Rは両者共に消耗し、やや手数が少なくなった印象を受けましたが、お互い引かずに勝利への執念を見せました。ただ若干前に出る姿勢が強かったのは秋山選手であった印象を受けました。秋山選手は2-1という僅差の判定でUFC初参戦で初勝利を挙げました。判定に対して疑問の声も上がっていますが、個人的には判定は妥当で、ジャッジも良く見ていたという印象です。

今回の勝利は秋山選手にとって非常に大きなものだと思います。UFC初戦での勝利というのはもちろんですが、あのような消耗戦の中で僅差の勝利を掴んだことは、今後UFCで戦っていく中で糧となりそうです。第一線での試合からしばらくブランクがあっての復帰戦、しかもUFCという舞台での自身初の判定勝ちは、少なからず秋山選手の自信となりそうです。さすがの秋山選手もUFC初戦ということでプレッシャーがあったのか、判定勝ちを告げられた後の安堵と喜びの表情が印象的でした。また、秋山選手の腫れ上がった顔が、その試合の厳しさを物語っていました。




秋山選手の試合のあと、第8試合で行われたダン・ヘンダーソン選手VSマイケル・ビスピン選手。この試合はヘンダーソン選手がビスピン選手から、2Rで衝撃の失神KO勝ちを収めました。ヘンダーソン選手は38歳という年齢ながら衰えを見せず、この試合ではまだ全盛期なのではないかという強さを見せ付けました。ビスピン選手もミドル級ではそこそこの選手なのですが、試合を通じてヘンダーソン選手のプレッシャーに圧倒され、後ろに下がるシーンが目立ちました。ビスピン選手は時折打撃で応戦する姿勢を見せるも、2Rの途中でヘンダーソン選手のボディへのストレートとモーションの少ないローキックで意識を下に向けられると、その直後に放たれた右フックにて顎を打ちかれ大の字に倒れました。ヘンダーソン選手が強さを見せ付けた試合でした。



セミメインではGSP選手がアウベス選手を相手に防衛戦を行いました。ウェルター級で絶対王者の地位を不動のものとし、同階級では相手の見つからないGSP選手。そのGSP選手を倒せるかもしれないUFCウェルター級の選手として、アウベス選手は最後の期待を持たれていたといっても過言ではない選手です。しかしその期待は試合が経過するにつれて儚いものとなりました。スタンドでの打撃では大差はないものの、試合を通じてGSP選手は幾度となくアウベス選手からテイクダウンを奪い続けます。GSP選手はテイクダウンを取ると、上のポジションからコツコツと攻撃を当てていきます。アウベス選手も抜群のポジショニングを誇るGSP選手に上を取られても、立ち上がるなどして身体能力の高さを見せ付けますが、すぐにテイクダウンされてしまいます。試合終盤になると、アウベス選手に残された手段は打撃での一発KOだけという焦燥感にも似た雰囲気が漂っていました。しかし、GSP選手にはスタンドでの隙もなく、1R~5Rを通じて再生映像を見せられているような完璧な試合運びでアウベス選手を完封しました。試合終了時にはアウベス選手は判定がアナウンスされる前に、既に負けを察知し、GSP選手の手を挙げて勝利を称えました。憎いほどの完全なる強さを見せ付けたGSP選手。GSP選手を倒すには、優れたタックル耐久性と、GSP選手を打撃で圧倒できることが条件でしょうか。






メインイベントではレスナー選手VSミア選手のヘビー級王者統一戦が行われました。ミア選手のコンディションは良さそうでしたし、動きも悪くなかったのですが、とにかくパワーに圧倒されてしまったという印象です。1Rでテイクダウンに成功したレスナー選手が、そのラウンドを通じて上のポジションをキープし、コツコツと打撃を当てていきます。レスナー選手のパワーと圧力が桁違いなので、一度上に乗られてしまうと、中々立ち上がるのは難しそうです。1R終了時点ではミア選手の表情には余裕がありそうでした。2Rではミア選手が攻勢に出ました。ミア選手は金網際でパンチをヒットさせ、そのあと膝蹴りを見舞います。膝蹴りをした際に、レスナー選手にそのまま足をつかまれてしまいますが、ミア選手はそれを利用して飛び膝蹴りを仕掛けました。その飛び膝蹴りは不発に終わり、そのままレスナー選手にテイクダウンされてしまいました。上のポジションを取ったレスナー選手は再び細かいパンチを打ち続けました。やはり一発一発の破壊力が凄いのか、ミア選手の動きが鈍くなり、そこでレフリーストップとなりました。パワーが桁違いなのと、元レスリング全米王者の肩書きからくるレスリング力は、中々攻略するのは難しそうです。関節技を仕掛けてもパワーで跳ね返されてしまいそうです。今回の試合でミア選手が打撃をレスナー選手の顔面にヒットさせるシーンがありました。打撃のガードにはまだ穴があるのかもしれません。そうなるとレスナー選手を倒す鍵はやはり打撃なのでしょうか。もしかすると、レスナー選手は今まで最長でも3Rまでしか試合をしたことがないので、4Rか5Rでスタミナが切れるのかもしれません。UFCヘビー級はしばらく低迷していましたが、レスナー選手を誰が倒すかというテーマが出来上がってきたのは良いことなのかもしれません。





UFC100の動画はこちらでも観られます。


■「UFC100」
7月11日(土・現地時間)米国ラスベガス・マンダレイベイイベントセンター

<第11試合 ウェルター級/5分3R>
○ジョン・フィッチ(米国)
(3R判定3-0)
●パウロ・チアゴ(ブラジル)

<第10試合 UFC世界ヘビー級王座統一戦/5分5R>
[王者]○ブロック・レスナー(米国)
(2R1分48秒 TKO)
[暫定王者]●フランク・ミア(米国)
※レスナーがUFC世界ヘビー級統一王者に

<第9試合 UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者]○ジョルジュ・サンピエール(カナダ)
(5R判定3-0)
[挑戦者]●チアゴ・アウベス(ブラジル)
※サンピエールがUFC世界ウェルター級王座防衛に成功

<第8試合 ミドル級/5分3R>
○ダン・ヘンダーソン(米国)
(2R3分20秒 TKO)
●マイケル・ビスピン(英国)

<第7試合 ミドル級/5分3R>
○秋山成勲(日本)
(3R判定2-1)
●アラン・ベルチャー(米国)

<第6試合 ライトヘビー級/5分3R>
○マーク・コールマン(米国)
(3R判定3-0)
●ステファン・ボナー(米国)

<第5試合 ライト級/5分3R>
●マック・ダンジグ(米国)
(3R判定3-0)
○ジム・ミラー(米国)

<第4試合 ライトヘビー級/5分3R>
○ジョン・ジョーンズ(米国)
(2R2分43秒 ダースチョーク)
●ジェイク・オブライエン(米国)

<第3試合 ウェルター級/5分3R>
○キム・ドンヒョン(韓国)
(3R判定3-0)
●TJ・グラント(カナダ)

<第2試合 ミドル級/5分3R>
●CB・ダラウェー(米国)
(1R0分55秒 ギロチンチョーク)
○トム・ローラー(米国)

<ライト級/5分3R>
●マット・グレイス(米国)
(1R2分36秒 ギロチンチョーク)
○シャノン・グジェルティ(米国)