6月13日(現地日付)に行われた、UFC99『THE COMEBACK』。同大会では日本でも馴染みのある3選手が復活を賭けて試合に挑みました。


まず最初に登場したのは宇野薫選手。総合格闘技のパイオニアの相性で呼ばれ、日本人の軽量級選手としては真っ先にUFCに参戦した宇野選手が復活を賭けて、スペンサー・フィッシャー選手に挑みました。

寝技に持ち込もうとする宇野選手と、スタンドでの攻防で試合を作ろうとするフィッシャー選手といった図式で試合は流れました。フィッシャー選手は寝技が全く出来ないという選手ではないのですが、宇野選手の寝技を警戒していたのと打撃での勝負に優位性を見出したのか、スタンドでの攻防に固執しました。フィッシャー選手は思いのほかタックルをかわすのが巧く、宇野選手は正面からのタックルではなかなかテイクダウンを奪うことが出来ませんでした。組み付いて倒れこんだ際に、相手に敢えて優位なポジションを与えてから体を反転させて上のポジションを奪うなど、宇野選手が巧さを見せるシーンもありました。ただ中々攻めの形までは持ち込めず、やや悪い印象で1,2Rを終えてしまいました。宇野選手は3Rの終盤で金網際で体を反転させてマウントポジションを取り、あわやのシーンもあったのですが、終了のゴングまでの時間が僅かだったために時間切れとなってしまいました。相手のフィッシャー選手が特に突出して優勢な場面を見せるシーンもなかったのですが、宇野選手は3-0の判定負けを喫してしまいました。フルマークの判定負けをするほどの差はなかったので、最終ラウンドでの宇野選手の反撃も加味して、ジャッジ三人のうち一人くらいは宇野選手の勝ちと判定しても良いような内容であったと思います。


ミルコ・クロコップ選手の復帰戦はムスターファ・アルトゥルク選手との対戦となりました。アルトゥルク選手は、サウスポーの構えのミルコ選手に対して、右のストレートから攻撃を仕掛けるなど、それなりのミルコ選手対策を練って来ていると思われるシーンもありました。ただしやはり経験が浅いのか、一つ一つの打撃が雑になってしまい、ミルコ選手の顔面を捉えるまでには至りませんでした。打撃の攻防の中で次第にミルコ選手のパンチがアルトゥルク選手を捕らえ始めました。ミルコ選手のストレートがアルトゥルク選手の顔面を捉えると、アルトゥルク選手は崩れ落ち、試合をストップされてもおかしく無いような場面に追い込まれました。そこから何とか持ち直し立ち上がったアルトゥルク選手ですが、その直後の攻防でミルコ選手の指が目に入ったのか、背を向けてしまいます。背を向けてしまったアルトゥルク選手に対して、ミルコ選手はパンチのラッシュで追い討ちをかけ、そこでレフリーが試合を止めました。ミルコ選手がUFC復帰戦を勝利で飾りました。



ミルコ選手は勝ちはしたものの、格下ともいえるアルトゥルク選手に対して、以前のような怖さや圧力は感じられませんでした。また得意の左キックにしても、一度出そうとする素振りを見せたものの、試合を通して一度も放つことはありませんでした。試合の流れの中で出すタイミングが無かったのかもしれませんし、膝の状態が完治していないのかもしれませんが、ミルコ選手が以前のような状態に戻るのは難しいのかもしれません。ミルコ選手はこの後DREAMと3試合契約を結んだと報じられています。UFC代表のダナ・ホワイト氏は「裏切られた」と激怒しているようです。ミルコ選手とUFCの契約がどのようなものであったかは定かではありませんが、これはミルコ選手が二度とUFCの舞台に上がれないことを意味します。もちろんミルコ選手もそれは認識していると思います。ミルコ選手はUFCで活躍するよりも、自らの限界を感じて引退を意識し、その舞台として長年戦ってきた日本で引退することを選んだのかもしれません。


メイン・イベントではミドル級転向が噂されているヴァンダレイ・シウバ選手がリッチ・フランクリン選手と対戦しました。1勝2敗とUFCでは負け越しているシウバ選手が再起を賭けた試合でした。試合を通してシウバ選手の動きは悪くなく、果敢に打撃を繰り出すなど、アグレッシブな姿勢でファイトを展開しました。決定打は無かったものの、試合を通してやや優勢であったのはシウバ選手に感じられました。3Rが終了した時点でシウバ選手は勝利をほぼ確信しているようでした。しかし、結果はフランクリン選手が3-0のフルマークで判定勝ちを収め、シウバ選手は敗れてしまいました。この判定に関しては疑問の声が多く飛んでいます。不可解な判定で敗れはしたものの、シウバ選手の動きは悪くないものでした。今後、ミドル級に主戦場を移す話もありますが、再起して活躍する姿を期待しています。








こちらでもUFC99の動画が観られます。
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