準決勝第一試合

長島☆自演乙☆雄一郎 VS 山本優弥選手


実は山本選手が準々決勝第二試合を勝ち上がった時点で、自演乙選手の決勝進出は決定的だと思っていました。準々決勝で延長戦まで戦った山本選手のダメージと疲労を考慮してもそうでしたが、相性を考えてもTATSUJI選手よりも山本選手の方が楽に勝てると思っていました。パンチ主体の打ち合いで試合を組み立てる自演乙選手ですが、TATSUJI選手はパンチの回転力も早く、的確さもあるので、自演乙選手が打ち合いを挑んでも返り討ちに合う可能性は十分ありうると思っていました。一方で山本選手のパンチの技術はそこまで優れていないのと、あまりコンビネーションもないので、自演乙選手のパンチの餌食になってしまうものだと思っていました。しかし蓋を開けてみると、山本選手は打ち合いで劣勢に立つ部分はあったものの、決して下がらなかったため、自演乙選手の連打を許しませんでした。試合の方は、準々決勝第一試合で負傷した目蓋の傷の出血が止まらなくなった自演乙選手の3RTKO負けとなりました。自演乙選手のTKO負けの原因となった傷自体は、その試合で付けたものではないので、山本選手にとってはラッキーな部分もありましたが、それでも山本選手はTATSUJI選手との激戦を制したことによって、一皮向けたように感じました。



準々決勝第二試合

小比類巻太信選手 VS 城戸康裕選手


日菜太選手の負傷により、城戸選手が代わりに準決勝に進出し、小比類巻選手と対戦しました。城戸選手は準々決勝の日菜太選手との試合で大きなダメージを負ってしまったのと、一度は敗退したことで気持ちが切れてしまったのか、その消耗度が試合開始早々にも関わらず画面から伝わってきました。要所要所で城戸選手も何とか攻撃を見せるシーンがありましたが、やはり準々決勝のダメージが深刻なのか、2Rでとうとう小比類巻選手にダウンを奪われてしまいます。ダウンを奪われた後でも城戸選手はハイキックで反撃するなど意地を見せますが、その後パンチを畳み掛けられ崩れ落ちてしまいました。小比類巻選手が決勝戦進出を果たしました。



決勝戦

小比類巻太信選手 VS 山本優弥選手


準々決勝、準決勝と激戦を制してきた山本選手と、ほぼノーダメージでここまで勝ち上がって来た小比類巻選手との消耗度の差は誰の目から見ても明らかでした。試合が始まると山本選手は気持ちの強さを見せ前に出続けます。山本選手は小比類巻選手にプレッシャーを掛け続けますが、1R終盤に小比類巻選手の膝を顔面に受けてしまいました。この膝が効いてしまい、その後パンチで畳み掛けられダウンを喫してしまいます。山本選手は立ち上がり1Rを乗り切りますが、このままKO負けしてしまうのも時間の問題かと思われました。しかし、ここから山本選手が驚異的な精神力を見せます。2Rも手数を減らすことなく攻め続け、3Rにはとうとうダウンを奪いました。小比類巻選手は、その詰めの甘さをしばしば指摘されますが、まさにその悪い部分が出てしまった瞬間でした。このダウンで小比類巻選手も目が覚めたのか、向かってくる山本選手に応えるように打ち合いました。余力の差で小比類巻選手が若干山本選手を上回ったのか、最後の打ち合いではやや優位に立った印象でした。1R、2Rと優勢に試合を進めた小比類巻選手が山本選手を退け、トーナメントを制しました。




このトーナメントの結果だけ見ると小比類巻選手がどん底からの復活を遂げたように見えますが、観ていた人たちにそのような印象を植え付けることは出来なかったようです。小比類巻選手は、相手が弱みをみせたり、自分が優位に立っているときには鬼神のような強さを発揮することがあるのですが、以前からやや自分が不利な状況になったり相手が圧力を掛けて来ると、背を向けてしまったり、自分から手を出せなくなる習性がありました。そういった気持ちの弱さを見せてしまう部分で、まだ復活を遂げたとは言い難いのかもしれません。


今回は骨を削る試合を見せてくれた選手が多かった中で、比較的無難な試合運びで優勝を手にした小比類巻選手には各方面から既に批判の声も聞かれます。


小比類巻選手を擁護するわけではないのですが、彼のファイトスタイルには致し方ない部分もあると思います。もちろん時折見せる小比類巻選手の消極的な姿勢は評価できるものではないのですが、今まで小比類巻選手が劣勢になった際に積極的に前に出ても、あまり良い結果が生まれていません。逆に返り討ちに合っていることの方が多い印象を受けます。プロのファイターとして観ている者を魅了する試合をするのは大事なことだとは思いますが、勝ちを捨ててまですることではないように思います。こういったことが、少なからず小比類巻選手のジレンマになっているような気もします。

いずれにせよ、今大会決勝戦の3Rで奪われたダウンなどは、小比類巻選手の油断による心の隙が招いた部分もあると思うので、次の大会ではそういった心の部分でも成長した、完全復活と言われるような姿を見せて欲しいと思います。



K-1 MAX 2009日本代表決定トーナメントは、ほとんど誰も予想していなかった決勝戦の組み合わせとなり、小比類巻選手が優勝しました。誰も予想していなかった選手が優勝したということでは、波乱の意味も含め、楽しめた大会であったと思います。