先日行われたUFC85にて、元UFCウェルター級王者のマット・ヒューズ選手が新鋭のチアゴ・アウベス選手にKO負けを喫しました。


この一敗によって、マット・ヒューズ選手は同階級のトップ戦線から一歩後退したと言わざるを得ないでしょう。



マット・ヒューズ


マット・ヒューズ選手は、現UFCウェルター級王者のGSP選手に敗れるまでは、同階級の絶対王者として君臨していました。現王者のGSP選手がそうなりつつあるように、マット・ヒューズ選手も同階級において難攻不落の存在でした。


しかし、GSP選手に敗れて以来、従来のような強さを見せることもなく、勝ったり負けたりの試合を繰り返しています。近年での負けはGSP戦しかなかったのですが、今回のアウベス戦での敗北は大きいと思います。


格闘技は勝ち続けることが非常に難しい競技です。他の競技と同様、どんなに強い選手でも必ず負けるときが来ます。しかし、それと同時に勝ち続けることが、特にトップ選手になると非常に重要になって来ます。そして当然の如く、勝ち続ければ勝ち続けるほど、一敗の意味するものが大きくなって来ます。この一敗の重みは、他の競技では類を見ないほど、大きいものではないでしょうか。格闘技が他のどんな競技よりも、体を酷使し、試合回数が限られているが故の重みであると思います。


絶対王者には常に勝ち続けなくてはならないという、プレッシャーが付き物です。しかし、そのプレッシャーがモチベーションでもあると思います。連勝中の絶対王者にとっての一敗は、そのモチベーションの糸を切ってしまう一因になっていると感じています。


例えば、PRIDEでのヴァンダレイ・シウバ選手や五味隆典選手が良い例でしょう。両者ともそれぞれの階級で絶対王者としての地位を確立していました。しかし、シウバ選手はマーク・ハント選手にPRIDE初黒星を喫して以来、勝ったり負けたりの戦績を残すことになります。試合内容に関しても、従来のような強さを見せることはなく、PRIDEでのラスト2試合では、KO負けで2連敗を喫しています。五味隆典選手も、PRIDE参戦以来10連勝で瞬く間に王者への階段を駆け上りましたが、マーカス・アウレリオ選手に負けてから試合内容にもばらつきが出てきてしまいました。その後のラスベガス興業ではニック・ディアス選手に一本負けを喫しています。(後にディアス選手の薬物使用が判明し、無効試合)



シウバ 五味


もちろん連勝が途切れ絶対王者から陥落するのには、一敗したことのみが原因ではなく、年齢的な要因や周りの選手のレベルが上がってくるという要因もあると思います。しかしながら、やはり絶対王者として君臨していた選手の一敗の重みというのは計りしれないものがあり、それは戦績においても証明されていると思います。


絶対王者が一敗した後に復活する条件は、次の試合で勝つこと、そして絶対に連敗をしないことだと思います。


先ほど例に挙げたシウバ選手と五味選手は、復活に向けて新たな道を築き上げていこうとしています。シウバ選手はPRIDEでの2連敗の後、UFCデビュー戦でも敗戦を喫しています。しかし、先日のUFC84で見事勝利を挙げました。次の試合で勝つことが重要になって来るでしょう。五味選手も戦極一戦目で見事に勝利を挙げています。次に試合が戦極~第四陣~で予定されていますが、もちろんこの試合は絶対に落とせない試合です。それぞれUFCと戦極という違う舞台ではありますが、元PRIDEの絶対王者として今後見事な復活劇を見せてくれることを期待しています。