情景、絵にしてみよう 秋田・鹿角市立十和田小学校・京野真樹さん | ホワイトボード

情景、絵にしてみよう 秋田・鹿角市立十和田小学校・京野真樹さん

 黒板に張られたホワイトボードに、1羽のガンと人が描かれている。5年生の国語。年老いた狩人と、残雪と名付けられたガンの頭領の物語「大造じいさんとガン」(椋鳩十)の最初の場面だ。京野先生が描いた。


 賢い残雪によって守られたガンの群れ。大造じいさんは手が出せない。あの手この手でワナを仕掛けるじいさんと残雪との知恵比べ。やがて残雪の知恵と勇気を知ったじいさんの胸に、残雪への友情や尊敬の気持ちが宿り……


 子どもたちは前の時間、タニシを付けたウナギつりばりを仕掛けてガンを捕らえようとする大造じいさんの「作戦」が、なかなか理解できなかった。そこで、物語の情景を絵にして考えてみる。


 まず、先生の絵をもとに、ガンの餌場の特徴を示す記述を教科書から探し出す。


 「見通しのきく所」「りょうじゅうのとどかない所」


 だとすると、餌場はどの辺り? 絵で考えれば、大造じいさんの場所との位置関係が理解できる。ガンにとって、餌をどこで食べるかが生きるための知恵であることを確認した。


 次はいよいよ、じいさんの「作戦」を考える。先生はまず、別のホワイトボードにガンを1羽描いた。


 「作戦に必要な道具をすべて描き足して下さい」


 じいさんが使った道具は、ウナギつりばり、タニシ、たたみ糸、くいの4種類。みんな教科書とにらめっこしながら、それぞれがどう使われたのかノートに描き込んでいく。


 先生は3人に、ノートと同じ絵を前のホワイトボードに描くよう指示した。比べてみると……同じ文章を読んだはずなのに、全然違うワナが現れた(写真)。


 たたみ糸の結び方も様々だし、使ったタニシの数も違う。


 「読み取ったはずのことが、人によって食い違ってるね」


 細かい情景の記述を見落としているのだ。これでは残雪の知恵のすごさや、じいさんとの勝負の様子はわからない。


 「わかったつもりでも、絵に描くことで足りない点が分かる。作品を味わうには、正確にリアルに理解することが大切です」


 絵を見ながら、違いの一つひとつを検証していく。


 「タニシの数はどう? 1匹ですか、たくさんですか?」


 「たくさん……」


 何人かがつぶやいた。


 しかし、先生に「教科書のどこに書いてますか」と聞かれると詰まってしまう。


 「はっきり『たくさん』とは書いてないよ。でもよーく読めばヒントがある」


 しばらくして男の子が「一晩じゅうかかって、たくさんのウナギつりばりをしかけておきました」とポイントの文章を読み上げた。仕掛けがたくさんあるならタニシもたくさん必要なはずだ。


 続いて女の子が、「いじょうなしとみとめると、初めて飲みこんだ」という文章から、「異常なしと異常ありがあるから、全部のタニシにウナギつりばりがついているわけじゃない」と気づいた。


 「よーく読んで想像していけば見えてくるでしょ」


出典:朝日新聞