SNSトラブルでの法律上の手続き | ひげ豚弁護士(休業中)があれこれ考えてみる

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前回の「SNS上のトラブルについての法律相談」の続きです。

SNSトラブルについて相談を受けた結果、①被侵害利益、②権利侵害行為のいずれも有りそうな場合にどのような法律上の手続きを取れるか、について書いてみたいと思います。

 

法律上の手続としては、大きく分けると、刑事上の手続と民事上の手続に分類することが出来ます。

 

まず、刑事上の手続について。

権利侵害行為の内容が悪質なものであれば、名誉棄損罪や侮辱罪による刑事告訴が可能です。

ただ、実務的な感覚からすると、刑事告訴を正式に受理してもらうになかなか骨が折れます。

弁護士は、事案の概要を記した告訴状を作成し、その裏付けとなる証拠を準備して、管轄の警察署(一般的には被害者の住所地)に持参します。しかし、警察はすぐには受理してくれません。告訴状と証拠を一旦預かり後日打ち合わせをすることになります。その打ち合わせで、警察としての事案の見通しと、補充してほしい証拠等があればそれを求めらたりします。

刑事訴訟法上は告訴を受理しないという制度はありませんが、実態として、警察は告訴状を受理したがりません。おそらく、警察としては、そもそも身柄事件(強盗、、窃盗や覚せい剤事件等)で忙しい上に、告訴受理してしまうと捜査して検察庁に事件送致しなければならず、名誉棄損や侮辱は刑も軽いので(名誉棄損罪で3年以下の懲役または50万円以下の罰金、侮辱罪で拘留または科料)、告訴事件は出来るだけ受理したくないという本音があるような気がします(当事者には関係のない話ですが、実態はそんなもんです)。

刑事手続きは、侵害者に上記の刑罰が科されるだけで、被害者にとっては何の利益もありませんが、被害者の気持ち的には警察・検察が動いてくれたということでかなりの安心感が得られるでしょう。

 

次に、民事上の手続について

これは、時間と費用がかかります。まず、侵害者を特定するために2段階の手続が必要です。

第一に、侵害者の記事を管理する会社に対して(アメブロの場合はサイバーエージェント社)、侵害者のIPアドレスとタイムスタンプの開示を求める仮処分手続を取ります。任意で開示してくれたらそれでいいですが、任意に応じてくれない場合に強制的にやろうと思うと、裁判所を通した仮処分手続ということになります。この仮処分は、裁判所の決定が出るまでに少なくとも1、2か月は要します。

そうして、侵害者のIPアドレスとタイムスタンプが開示されたら、第二に、当該IPアドレスを管理する会社を特定して(携帯ならドコモ、AU,ソフトバンク等)、当該会社に対して、当該IPアドレスの個人情報を開示するよう求める情報開示請求訴訟を提起することになります。これは訴訟手続ですので、裁判所の判決が出るまでには少なくとも半年以上はかかると思ったほうがよいです

この2段階の手続きを経てようやく、侵害者が誰なのか特定でき、侵害者を被告として、損害賠償や名誉回復を求める訴訟を提起することができます。

トータルで一つの仮処分と二つの訴訟をしますので、最終的な解決が得られるまでに1年~2年以上はかかると思っておいたほうがよいです。

 

では、これらにかかる弁護士費用ですが、個々の弁護士との話し合いで決まることになりますが、概ね一手続毎に着手金20万円(印紙代等の実費除く)くらいはかかると思っておかれた方が良いと思います。

刑事告訴で20万円、IPアドレス開示の仮処分で20万円、発信者情報開示請求訴訟で20万円、侵害者相手への損害賠償請求訴訟で20万円といった具合です。(概ねの目安です。後は個々の弁護士との話し合いによります。私も実際に受任するとすれば、もう少しディスカウントすると思います。)。

 

こうした弁護士費用を相手方(侵害者)に負担させることができるかというところについては裁判例として確定されているわけではありません。実務的には交通事故の場合には請求額の1割を弁護士費用として請求できるとされていて、これをもとに請求額の1割を損害額に上乗せして請求を認めた裁判例もあります。

 

いずれの手続きを取るにせよ、時間と費用が掛かることがお分かりいただけと思います。

しかも、名誉棄損や侮辱等の損害賠償請求訴訟で裁判所が認める損害額は数万円から数十万円程度と低いので、費用的にはマイナスになることを覚悟しておく必要があります。

もし、これらの手続きを取ることを検討される場合には、時間と費用が掛かることを十分にご承知おきください。

 

それでは。

ちゃお~