
ずいぶん昔に友人から教えてもらったことがあった。
「祖先は部落出身の穢多だった」と。
そのとき私の頭に浮かんだのは歴史の授業で聞いたことのある身分、
差別に虐げられていた身分の人達っていうことだけだった。
実際にそういう人達がいたのは現実なんだな、と思うだけで
それが、どれだけの差別を受けていたのかは想像すら出来なかった。
島崎藤村の『破戒』は、そんな話だった。
身分のために、偽って社会を生きていかなくてはいけない。
人としては扱ってくれない、痛みと苦しみ。
それを読んで、友人の教えてくれた言葉の意味やその重みがようやく分かった。
そして自分の無知というものを思い知った気がする。
イメージする、というのはすごく大切で、
自分が経験出来なかった事や知らなかった事に思いがけず関わることができる。
友人が本当は何を言いたかったのか、本は一体なにを伝えたかったのか。
そして、遠い何処かの国で起きる出来事を自分なりに想像してみる。
自分が本の主役になってみたり、自分が差別を受ける側だったら。
それから、その出来事に立ち向かわなくてはいけなかったら・・・・?
たった独りぼっちの世界なら、イメージはいらないかもしれない。
でも誰かが周りにいてくれる世界にこそ、イメージは教えてくれる。
誰かの気持ちを感じ取る、ということを。

