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桜はきっと散るから、美しいのだ。
もっと言うと、散りかたすらも美しい。
ハラハラと舞う花びらの儚い感じは、
愛せと言わんばかりの、桜のささやかな主張なんだと思う。


さて、浅田次郎さんの『憑神』を読んだ。
先にDVDを観てしまったので、解説本ぐらいに思えたのだけど、
やはり本のほうが、中身にしても登場人物にしても厚みが違う。
むしろ、本書の中で一番大切なところを削ってしまったような、
そんな印象をあとから、映画に対して思った。


読んでいると、主人公の彦四郎にじれったさに似た苛立ちが沸く。
世の中がどうあろうと、誠実で優しくて、あまりに誠実だと
馬鹿をみる、そんなお手本を、つらつらと見せつけられる。

そう思いながらも結末を迎えると、不覚にも涙目になってしまった。
彦四郎の決断に、訳もなく清々しくなってしまう。
自己犠牲などというつまらない類いを遥かに超えて、
ただの彦四郎という男の人生を全うする、そのことに。

あの結末に涙したのは、私自身がよく分かってない。
だけど、大事な何かが一体なんなのか、
見えないものを見つけるのは、いつだって難しい。
ただ分かったのは、馬鹿というのは本当はちっとも馬鹿じゃない、
ってことぐらいだ!