91

初めて『愛してる』っていう言葉をもらったのは
高校1年生のクリスマスのデートだった。
なんだか嬉しくて、甘くて、温かくなる、
魔法の呪文みたいだった。
もちろん、それがどんなものなのか、
その時の私には少しも分かっていなかったし、
それがどんな気持ちになって言うのか分かりもしなかった。

だけども、『愛してる』っていう言葉は、
もの凄く気恥ずかしくて、現実味がなくて、
私は、それを受け止めることが出来なかった。

その言葉をくれた彼は、いつも私を待っていてくれた。
クラスのHRが終わるまで、ドアから顔を出して。
喧嘩しても、次の日には必ず彼が迎えに来てくれた。
私が終わりを告げた時、校内だったにも関わらず、
彼は泣いてしまった。

泣いている彼を見て、私は初めて傷ついた。
魔法が解けたのだ。
終わることは哀しくなかったけれど、
彼を傷つけたことに傷ついた。
彼が想ってくれればくれるほど、違うって
応えられなくなってしまった私なのに、
なぜだかクリスマスの季節になると、
彼の『愛してる』と言った顔を思い出す。


もしかしたら、
自分を誰よりも深く想ってくれただろう、
という相手こそ、忘れられない人になるかもしれない。