
もうすぐ会社のチームが解散になることに決定した。
嘘みたいに動揺と、不安と、寂しさに、私たちは途方に暮れている。
チームは私を含め4人で、一人一人の個性がとても強い。
だけども、上手く纏まっている。
私たちを中和させ上手くいくように出来ているのは、
ある女の子の存在が大きいと、私は思う。
彼女に、もし私は早くに出会えていたなら
悪意などとは無縁の世界で生きる事ができ、人を心から信じることは容易く、
むしろ疑問さえ湧かずに来れたかもしれない。
そう思えるのは、彼女が誰にも悪意を持たず、誰にでも平等だから。
そして心から誰もかもを信じきって、思いやれるから。
私は完璧にいい人などいないと、何処かに垣間見える計算にがっかりしていたものだった。
だけども、彼女に打算的な考えや計算された優しさなど何処にもない。
私にとって年下の綺麗なだけだと思っていた彼女に、衝撃を与えられた。
そのうち、私は恐くなった。
彼女には私たちの経験から備わった知恵は、必要ないのかもしれない、と。
私たちが生き抜いてきた強さと正論は、余計な混乱を招くかもしれない。
幸せになろうとする彼女に迷いを生じさせ、彼女を変えてしまう。
例えば、ダイヤモンドで言うのならA級品とB級品がある。
B級品は手だれの職人に、光を放つような細かいカットを施してもらわなければならない。
しかしA級品はすでに光を持ち、シンプルなカットで十分光を放つのだ。
余計なカットはダイヤモンドの価値を損なわせ、あるべき所に置いてはくれないだろう。
彼女は、言うなればA級品のダイヤだった。
それから私は、彼女に余計な知恵やセオリーは避けてきている。
迷い込んだ挙げ句、私はチームの年長に私の考えていることを話したのだ。
私はあんなに善い子を見た事がないし、会ったことがない。
それに私たちとは、今までもこれからも輝き方は違うだろう。
彼女は本当に幸せになれるだろうし、幸せになってもらいたい。
だけど私たちの言葉ひとつで、彼女に生まれなかった疑問を気づかせてはいけない。
知らなくてもいい世の中がある。気づかない方がいい事実がある。
それによって磨かれて輝く人もいるだろう。
でも私には、彼女がすでに磨かれている人間に思える。
人間はクレバーになりすぎると、余計なものまで見ようとするのだ。
それは向上心を野心に変え、正義感は必要悪を求める。
彼女の淀みない純真さや労る気持ち、愛する気持ちを汚してはならない。
私が彼女に、何を言えるというのだろう?
私が知る事の出来た真実を語ったところで、何が生まれるというのだろう?
そんな真実は、何の拠り所となるのだろう?
私は、きっと彼女を抱きしめる力が弱い。
けれども、きつく抱きしめたいのは自分の気持ちを満足させるだけであり、
きつく抱きしめられた彼女は息苦しく、辛いだけかもしれない。
だから、私は言葉を放つ事に慎重になった。
知りたいと心から願った時にでも、それは遅くないのだから。
必要なときに欲しい分だけ、私の持っている真実と知恵と経験をあげよう。
本当のことは。
彼女がとても大切、ってこと。
本日、誕生日を迎えた彼女へ。