山田詠美さんの本、アニマルロジックの中でこんな一節がある。

『彼にとっての本当の事は、言葉の中には存在しなかったのだろう。
 本当の事を、言葉で表現する必要もなかったに違いない。』

本当のこととは、事実や真実ではない。
そう感じたものやそう捉えた心に存在していく。
例えば、愛しているというのは言葉だけでは本当にはならない。
自分で感じていくもの、そうさせるもの。
言葉にしなくとも愛として捉えることが出来るときもある。
その中で、信頼や信用を得ている関係に言葉は通用するのだ。
信じられないときに、いくら言葉を投げつけられたって心に届かない。
本当のことは言葉の中に存在しないというのは、
信用に値する人間に出会えてないということ。
本当のことを表現する必要がないのは、きっと
自分をさらけ出せる相手に出会えていないから。

ありのままに、そのままに、全てを見せるのは勇気が要る。
けれども、それが出来る相手に出会えたなら、
それは本物で、そして本当の自分を見つけられる。
そんな相手を失わない術を忘れてはいけない。
それは事実や真実は時として本当のことにしてはならないこと、だと思う。