季節が運んでくるものは、愛しいものだけじゃない。
嫌な思い出も、切なくした時間も、不安が過ったあの頃も。
冷たくなった風は、ときどき同じように感覚さえも冷たくさせる。

「悔いる事に力を注ぐより、前に進む事へ情熱を傾けた方がいい」
そんなことをTVで言っていたけれど。
それがとても大事なことだっていうのは、分かる。
でも悔いたって、立ち止まったっていいじゃない。
それでも、人は生きていけるのだから。
明日が信じられないのなら、昨日と今日だけが真実だって思ったっていい。
信じられるものは、5年後でも10年後の未来でもいい。
いつかは、明日が恐くなくなるまで。

私は、ずっと誰かを大切にしたかった。
自分の持っている全てで、全身で、全力で。
そんな風に、誰かを大切に想い続けたかった。
そして同じぐらいに、想って欲しかった。
世の中にはこれだけ沢山の人達がいるのに、
私がそう想えるのはたった1人だけ。
この世界に存在する、たった1人の人だけ。
だから、このたった1人を傷つけたことは本当に苦しい。
すごく哀しい気持ちになる。
でもこの痛みを、私は忘れなくていいと思っている。
きっと忘れなければ、傷つけたりしないだろうから。
彼にも、同じように思ってほしい。
私を傷つけた季節が来るたび、苦しくなって。
哀しくなって、後悔して、忘れないでいて。
傷つけたことで、もっと傷ついて。
でないと、優しくなれなそうで不安になるから。

乾いた冷たい空気は、あの心許ない感覚に呑み込まれそうになる。