悠里(ゆうり)がソファで寝ている。
「……珍しい」
いつもはちゃんとベッドで寝るのに。

よっぽど疲れたのだろうか。

服も着たまま、化粧もそのまま。

せめてストッキングは脱げばいいのに。

足が締め付けられて寝にくくないのだろうか。

ああ、それとも、それすら気づくことがないくらい、睡魔は強敵なのだろうか。
「悠里ー、これからご飯作るけどー? 何食べるー?」
小声で言ってみたところで聞こえないことは分かり切っている。

ただ、料理に文句を言われたときの予防線のようなものだ。

俺はちゃんと聞いた、悠里が答えなかっただけ。

なので俺の好きなものを作る。


荷物を置いてそのまま台所に行こうとしたけど、やめた。

もう一度ソファにいる悠里に向き直る。

やっぱりぐっすり眠っている。

目の下にクマが見える。

徹夜が続いていたのかもしれない。

もしかすると、この家に帰ってくるのも久しぶりなのかもしれない。

単に俺が寝ているときに出て行って、寝ているときに帰ってきていたわけではないのかもしれない。

そう思っていたのだけれど、違ったかな。
「お疲れ様、悠里。今日は腕を振るって美味い料理を作るからな」
そう言って寝ている悠里の頭をなでると、にゃあ、とダイニングのいすに座っていたミツが鳴いた。

俺はミツの方を向いて口に人差し指を当てる。
「内緒だよ」
ミツは返事をするように、にゃあ、と鳴いた。