「早めの行動を心がけたつもりだったのですが、それはもしや『つもり』で終わってしまったのでしょうか」
「いえいえ、岡崎(おかざき)さんはきちんと早めの行動を心がけていますよ。
ただ岡崎さんより、私の方がさらに早めの行動を心がけていただけのことです。
何も落胆することではありませんよ、ええ、本当に」
「本当に本当にそうでしょうか、笹原(ささはら)さぁん…」
「語尾が弱々しくなってますよ、岡崎さん。
そんな調子では私も素に戻ってしまいますよ、ええ、本当に、マジで」
「もう戻ってるじゃん、笹原さん」
「だって岡崎さんが、絵に描いたようながっくり具合なんだもん。
戻っちゃうよこれはもう、仕方ないって」
「せっかくの初デートで気合いを入れてきたのに、まさかこんな結果が待ち受けていようとは…」
「大袈裟だなぁ、岡崎さん。
大丈夫。
ちょっと抜けてるぐらいが女の子の母性本能をくすぐるんだって」
「笹原さんは母性本能くすぐられた?」
「そこそこ、割と」
「微妙だ!」
「おお、いいね、岡崎さん。
その落胆っぷり。
笑えるわー」
「笑わないでー。
彼氏の威厳が!」
「あるよ、多分、きっと」
「不確かですね!」
歩きながら早口でしゃべるカップルに周りは注目していた。