前静岡県知事が暴言を吐いて辞任、するとリニア推進派がこぞって歓喜している。おそらく前知事のせいでリニアが予定通り開通出来なくなったと本気で信じているのだろう。そして面白い事に、そういう人の多くが自民党や維新の支持者でもあるのが面白いところだ。

 

 推進派の中には、現行の東海道新幹線が開業する前も批判論が主だったが、開通してみたら新たな需要が生まれたと、だからリニアも新たな需要を生むのだから必要だと。更には地震で東海道新幹線が不通になった時、代替交通機関としてリニアが必要という意見もある。批判派はなんでも批判すると言いたがる人種がいるが、批判派を説得できずして前に進めるべきではない。

 

 おそらくリニアは大失敗に終わると思う。まず、今の計画では品川~名古屋間を45分程度で結ぶとしているが、早過ぎるからか一時間に6本しか設定できないらしい。車両限界が新幹線より狭い在来線並なので、16両編成としても、座席数は80%程度しか確保できない為、東海道新幹線のぞみを全て代替できるだけの輸送力が確保できない。また、京都・新大阪以西は名古屋乗り換えとなり、名古屋駅が大深度地下となる為、乗り換え時間もかかる為、そのまま新幹線に乗り続けた方が早く着く場合もあるし、東京駅まで行かないのも問題。

 

 また、リニアは新幹線に比べて消費電力が3倍になるらしく、原発の更なる再稼働が必要不可欠と言われている。また、経営的にも東海道新幹線の輸送量がリニアに移る分、東海道新幹線の利用者は減少するので、JR東海の利益も確実に減少する。JR東海にとって新幹線の利益が減少する事は、会社存亡の危機と同じであり、経営を考える人だったら、いかに無謀な計画であるか分かると思う。

 

 中央新幹線は田中角栄の時代に定められた整備新幹線の一つではあるが、着工順位は高くなく、これに焦ったJR東海葛西元会長(故人)が功名心から建設をぶち上げたのだと思う。葛西氏は旧国鉄の改革派と呼ばれ、あの瀬島龍三氏(つまり中曾根康弘元首相)をバックに分割民営化路線に進み、民営化後はJR東海の幹部となり、社長就任後は政財界特に右寄りの政治家と繋がっていく。その大将が故安倍晋三元首相で、JR東海単独事業だったリニアはほどなくして財政投融資の利用が認められ、国家的事業となった。

 

 国家的事業と聞いて思い出すのは原発、五輪、万博だろう。かつてはこれらが上手くいった。しかし原発は事故を起こし、東京五輪は汚職の巣窟となり、大阪万博は工事が遅れに遅れ失敗が確定的だ。そしてリニアもそれに加わるだろう。葛西氏の個人的な想いだけでここまで来てしまった。今からでも遅くはない。建設中止か、新幹線規格として開通させ、既存路線との乗り入れを可能にするべきだ。

 

 コロナ禍により出張の必要性は低下し、移動の需要も低下した。なんでもかんでも新幹線という発想は時代おくれであり、在来線の改良こそ必要だ。新幹線建設は北海道、北陸、西九州の残り区間までで一旦、立ち止まるべきだと思う。