息子が不登校になったのは12歳で中1のとき。

その時下の娘は3歳だった。

 

家では3歳の娘につきっきりで育児しているような状態での、息子の不登校生活スタート。

不登校初期は、親も過剰に登校刺激をしてしまう時期。

学校以外のところや家族の外出でも、行こうと思っても出られなかったり。

息子本人も行きたいとか行かなければいけないという思いと、でも家から出たくないという気持ちが葛藤している状態。

行くのか行かないのかとやり取りしているうちに、苦しくて泣いたり叫んだり奇声を発したり暴れたりすることも。

 

3歳の娘はそれを見て何を感じていたのかな。

 

兄が荒れている時、娘は空気を読んで、平気なふりして一人遊びをしていた。

じっとその場に固まるわけでもなく、控えめだがマイペースに遊び始める。

「怖い」と言ったりしない。

共鳴して泣くこともしない。

母のところに寄ってくることもしない。

待たされていても「まだ―?」とも言わない。

いつもなら、兄と母が普通に話しているだけでも割って入って私だけを見て!と言わんばかりにうるさく付きまとうのに。

こんな時にはとても”おりこうさん”な女の子になる。

すごくストレスを感じているはずと思うけど。

今私がお母さんに甘えても構ってもらえない、とか思うのか。

兄がこちらに危害を加えたら怖いから、とか思っているのか。

教えてもいないのに静かにできる娘を見ていると、ちょっと切なくなる。

頻度は減ったが、これは今でもたまにあること。

 

今思えば、まだ3歳で、「保育園に行きたくない」など、具体的なことは言わない頃だった。

別れ際に号泣してしがみつくことはあっても、強制的に保育士に預けることもできた。

 

でも4月に年中組になり、担任が変わり、お姉さんになったからと張り切って保育園生活を頑張っていた娘も、頑張りすぎたのか、6月から急に娘のストレスが爆発した。

私に対して試し行動を繰り返すようになった。

「お母さんなんか大っ嫌い!」と言って叩いてきたり、引っ掻いたり、おもちゃを投げたり。

そして登園渋りがひどくなり、登園時間はどんどん遅くなり、ついに「保育園には行きたくない!」と口にするようになった。

 

兄が不登校で、そのストレスで母親が情緒不安定で、娘も余計にストレスが募ったのかもしれない。

 

娘のことも少し相談したら医師は、兄の不登校と、娘の登園拒否は関係ないと言ってくれたが、それでも兄妹。母親は同じ。影響はないわけがない。

兄は関係なくても、兄のことでおかしくなっている母親の影響は受けて当然。

私としては、娘と接するときは、兄のことは考えないようにしていたつもりだが、そんなに器用じゃなかったということか。

 

夫には娘の行動が単なるわがままに見えたようで、一度、おもちゃを投げた娘を厳しく叱り、お尻を叩いた。

私は体罰絶対反対だし、体罰がないとしても、大きな声で脅すような言い方など、力で抑えつけることはしたくないと思って子育てをしてきた。

夫は時には厳しくするべきと思うタイプ。自分がそうやって育てられたからというのが一番の理由だと思うが。

でも案の定、叱っても試し行動が減るどころか増えて行った。

 

試し行動に悩んで、ネットで調べたり、育児本を読んだりして、試し行動をする子どもは愛に飢えている状態という解釈に至った。

兄が不登校とは言え、家に居るときはほどんどが娘に付きっ切りなのに。

こちらは愛情たっぷりなつもりでも、娘には足りていないらしい。

必要な愛情の量が子どもによってそれぞれ違うらしいことも知った。

試し行動をされても、全て受け入れて、何をしても嫌いにならないよという態度を示さないといけない。

これらのことは夫も共有してくれて、それからは試し行動が出ても厳しくしかることはしなくなった。

 

今思えば、保育園に行きたくないと言うのも試し行動のひとつだったと思う。

わざと親(その他関わる大人)を困らせてみて、限界点がどこなのかを探るのが試し行動。

普通レベルの試し行動は、叱られる時点が限界点。

叱られたけど許してくれた、という流れから、親の愛情も測る。

赤ん坊や幼児がいる家庭や保育園では日常的によくある風景。

 

でも愛情が不足している子どもの試し行動は、親に限界があってはいけないのが難しいところ。

わざと困らせたくせに、親が限界に達して叱られたら愛情がないと判断するかのような。

愛がないのは許さない。お仕置きと言わんばかりにもっとひどい試し行動をする。

親の方が限界に達する前に、子どもに深い愛情を示してやるのが試し行動をやめさせる唯一の方法。ものすごく難しい。

 

中学生の息子の不登校は試し行動ではないが、叱ったり責めたり急かしたりせずに、試し行動の対処と同じように、とにかくどんな君でも愛しているよと伝えることが、不登校児の心を安定させることになるのだという事は、娘を通して学んだこと。

 

学んだはいいが、間違わずに実行するのは難しい。

愛ってなんだろう。

 

ちっこい4歳児が試し行動をしても、怒らない叱らない、はできる。

自分の身長を超えた大きな中学生男子がうだうだしているときにひたすら優しい言葉をかけ続けるというのは、ものすごく難しい。

ついつい大人扱いして厳しい一言を投げかけてしまうこともある。

家に幼児がいるからなおさら大人に見えてしまう。

それでもまだ14歳は子ども。正しく子ども扱いしてあげなければと反省の日々。