『追想五断章』米澤穂信

￥1,365
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☆☆☆
古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。（amazonより）

『インシテミル』の米澤穂信の長編小説です。

全体としては「5つの短編小説を探す」という小目標の奥に「アントワープの銃声の真相を探る」という大目標がある比較的定型的な構造を持った小説です。
トリックや、それを予想するだけの条件の与えられ方などミステリー的な意味では不完全ですし、小目標はともかく、主人公が大目標を探る動機が不十分など物語としても粗はあります。

しかしそういった諸々の難点は主人公自身が日々感じている疎外感や徒労感と物語的な目的が一致することで合理を越えたところで読者に納得感を与えてくれます。
またリドルストーリーのどこか座りの悪い不気味な空気感も見事ですし、不完全さを覆い隠す小説的な魅力がある作品とよべるだろうと思います。