「なんで……」

自分はとある有名人が書いたサインの護衛任務についていた。

護衛任務なんて言ってはいるがただの派遣バイトで、ただの運転手だ。

依頼主は50代後半で太り気味の男だ。

(君。なんだかピザが食べたいなぁ。次の角のところのピザ屋寄ってくれないか?)

「はぁ、いいですけど」

しまったこれは仕事だ。

本来なら愛想良くはぁいと言うべきなのだろうが、長い運転のせいで内心いらいらしていてついうっかり口から出てしまった。

車を停めると依頼主は店内へ入っていった。

俺はタバコを吸おうととりだして、止めた。

仕事中だからな。

しばらくすると依頼主が出て来た。

(君。店で買うと20パーセント増量だったんだ。儲けてしまったよ。)

とてもどうでもいい。いいからさっさと食べてくれ。

《よう。そこの人たちなにしてんの?》

へんな人が現われた。

(私達は取引先へ向かう途中さ。ここのピザは美味しいねー。また食べたいくらいだ。)

《へー取引なんて景気のよいこって。俺みたいなフリーマンには無縁の言葉だね》

「…依頼人。時間が押しています。早く出発しましょう。」

俺は早く仕事を終えて帰りたいのだ。

まだ依頼人は1ピースしかピザを食べていない。さらにこんな男としゃべっていたら、さらに遅くなってしまう。

「どうぞ。車内でお食べください。」

(いやぁ。ピザを室内で食べたら匂いが付いちゃうだろ?それにこれは俺が買ったものなんだ。自由に食べさせてくれ。)

「じゃあ残りのピザ、俺が買い取るので行きましょう。」

俺は20パーセント増量の6ピースなら元の値段で買い取っても損ではないなと、強引に依頼人からピザを奪い取った。

(まったく…そういうわけでは無いだろうに…)

依頼人は渋々車内へ入っていった。

俺は後でピザを食べようと思っていたが、持ち帰るのが面倒になりその場に投げ捨てた。

《おいおい。食べ物は大切にしろよ?》

「では失礼します。」

俺はそう一言言うと車の中へ入ろうとした。

《待てよ。俺の用事がまだだろ?》

はぁ?何言ってんだと目線を向けると、男の手にはナイフが握られていた。

それから事は一瞬だった。

見知らぬ男は後ろの依頼人を刺し、今回の取引の物をひったくると一目散に逃げ出した。

凍りついた頭だったが、依頼人のうめき声で目を覚まし、とにかく男を追いかけねばと外へ飛び出した。

もう詳しく書くのがめんどくさい、

男を倒し、何故か殺したい欲求に駆られたがそれを抑え。警察へ通報した

しばらくすると警察と見られる外国人の男と女が現われた。

拘束した男と一緒にパトカーへ入り込んだ。

俺は事件の概要を説明した。

するとその男はこう付け加えた

《ホームページでダウンロードすればいいだろ?ってこの男が言ったんだ。》

と俺を指差し言った。

俺はこの男が何を言っているのか分からなかった。

[なるほど…でもこのホームページ。世界で15人しか見れないんですよ?]

今の質問は俺に言ったのか?何故?

「質問の意味が分かりませんが。この男の妄言ですよ。」

《その男はピザを捨てていました》

[それは本当ですか!?それは事実なんですね?]

それは確かに悪い事だが…今は関係ないだろ!!
俺はさらにいらいらして足を揺すった。

「はい。食べ物を粗末に扱った事は謝罪しますが…今回の事には何も関係無いですよね」

[精神鑑定書はお持ちですか?]

「え?」

[精神鑑定書はお持ちですか?]







ベッドから目を覚ました。

なんて夢だったんだ。

訳がわからない…。

俺は冷蔵庫からお茶を取り出し、それを飲みながら窓際で行き交う人を眺めていた。

そこへ車椅子に乗った40代前半の男と犬が通りかかった。

『黄昏ちゃって何を考えているのかい?』

その男との会話は心地良いものだった。

そしてどうやらこの人は旅人らしい。車椅子で旅人っておかしいじゃないか。

「甘いものでも持ってきましょうか。あなたは甘い物食べれますか?」

『えぇ。私も甘党なんですよ』

「では持ってきますね」

俺はリビングへ行き、キットカットと普通のチョコとお茶を取り出した。

「お待たせ…しま…した。」

そこに彼の姿はなかった。

窓から顔を出して近くを探ってみるがやはり居ない。

「いきなりどっかへ行ってしまったのか…?」

今そこへ居たはずだがなんだか夢だったように思って来てしまう。

しばらくたたずんでいると

【ただいまー】

妹が帰って来た。おかえりーと迎えに行く。

たわいのない会話を二言三言して俺は自室へ戻った。

『遅かったじゃないか。どれ甘いものはどれだー?』

あれ…?さっきの旅人がいるぞ。

「あなたこそどこ行ってたんですか?てっきりもうどこかへ行ったのかと…」

『ん?ここに居たはずなんだがなぁ…。まぁ犬と遊んでたし見過ごしたか?』

ナゼココニイル

それから日が暮れるまで会話を楽しんだ。

「すっかり暗くなりましたね…どうです?泊まるところが決まってなかったら、今日は一晩うちへ泊まって行きません?」

『気持ちはありがたいけど、迷惑だろうし…』

「そんなことないですって!ほら入って入って」

旅人の男と犬を室内へ入れてあげた。

「ひとまず風呂に入って来たらどうです?その間に場所を作っときますよ」

旅人の男はありがとうと言い、浴室へ入って行った。

「ようし準備しないとな」

俺はそう呟くとリビングへ行った

「おっいい匂い。今日お客さんが来てるから一人分余計に作ってくれないか?」

【もぉーそういうのははやめに言ってよー】

料理を作るのは妹だ。両親共に働いていて帰宅が遅いためだ。

「ごめんて。じゃあよろしく頼むな。」

【しょうがないなぁ】

なんだかんだいいながら妹は一人分多く食事を作ってくれた。

料理ができるまでの間俺は旅人用の寝るところを作ったり、お皿を並べたりした。

『いやぁ、とても美味しそうだね。自分のためにありがとう。』

風呂を終えた旅人さんが出て来た。

【いえいえ、こんな料理で良ければ…】

さて。席についてそろそろ食べようかというとき、ドアがガチャリと鳴った。

〈ただいまー〉

母親が帰って来たのだ

僕らはおかえりーと口々に言う

〈あらお客さん?どうも初めまして。そういえば手紙が届いてたよ〉

「俺?ありがとう」

受け取ったそれは宛名が書いていない白い封筒だった。

「なんだろう…?」

友達に何か頼んだっけ?まぁとにかく開けてみよう。

開けると中に紙が一枚入っていて、こう書いてあった



精神鑑定書はこちらになります


!?

気付くと自分はパトカーの中に居た。


もう訳が分からないよ