突然の事態に

ナースが4-5人やってきて、

あわただしく分娩の準備が始まった。

 

 

 

「早くして!お願いだから!!Hurry Up!!」

声にならない声で叫ぶ。

 

 

 

 

「ドクターは?まだ到着してないのか?

別のドクターでもいいから、誰か

 

 

とにかく、早く呼んでくれ!!」

 

夫がナースに言う。

 

 

 

 

 

「アーーーーッ!!!!頭が、頭が出るッ!!!! The head is coming out!」

 

 

再び私は叫ぶ。

 

 

 

さっきよりもっと強い痛みが走り、

骨盤を通って、ベビの頭が

出る感触があった。

 

 

 

その痛みは、

これまでの陣痛とは

まるで違うレベルのもの。

 

 

 

これまでに体験したことのない、

想像をはるかに超える

異次元な痛みだった。

 

 

 

 

 

骨が押し開かれていく痛み、

一人の人間の中から、

別の人間が産み出されるという、

 

 

古代から続く、

子孫繁栄のための、

動物的で、宇宙的で、
神秘的な痛み・・・。

 

 

 

 

 

 

 

ナースが股をのぞいて、

おそらく頭が少し見えたのだろう、

私の身体を横向きにして

 

 

 

 

サンドイッチみたいに

股を閉じさせて、

ベビを押し込んだ。

 

 

「やめて!!!そんなことしないで!!!!!Don't do that!」と私は泣き叫ぶ。

 

 

 

股の間を血が流れる感触があった。

 

私の両足に挟まれたベビの頭。

 

 

 

そのままふさがれて、

もし窒息したら、どうするの!!?

 

どうしてくれるの!?

 

 

 

 

 

産まれてこようとしている小さな命を、

お願いだから、助けて。

 

 

 

 

 

お願いだから!!!

お願いだから・・・!!!!!

 

 

 

 

 

ナースから、深呼吸し、

イキまないように言われる。

 

深呼吸をこころがけるが

 

うまく呼吸ができない。

 

 

短く、ハッ、ハッ、と

犬のような呼吸しかできない。

 

 

 

イキむとベビが飛び出すかもしれないから、

ドクターが来ていない今の段階では

 

出てこないように

足で挟む方がいいと

判断されたようだった。

 

 

 

 

それでも私は、

いまにも産まれようとしているわが子を

 

キャッチしてくれるドクターが

いないことが悲しくて、

 

骨盤がさらに押し開かれ

 

またベビの頭がさらに出てくる

感触がして、叫び続ける。

 

 

 

Please!Please!!!!Head is coming out, coming, coming!!

 

 

Please!!!!Please Help my baby!!!

 

 

 

 

 

私はどうなってもいいから、

早く、いますぐこの子を助けてあげて!

お願いだから!!

 

 

 

激痛が走り、

何度も頭が出てきては、

その度にナースに押し込まれる。

 

 

 

 

Please!Please!!!!

 

 

汗だくで、

目も開けられない中、

叫び続けた。

 

 

 

 

 

院内にいた別のドクターが

急遽かけつけてきた。

 

 

そのドクターが分娩の用意を

 

 

 

 

整えたとたんに、

 

ようやく分娩台に両足を開いて

乗せることが許された。

 

 

「アァーーーーーーーッ!!!Coming!!」

 

 

 

 

 

そしてそれから

数分もしないくらいすぐに、

ベビの頭が完全に出て、

身体もすぐに

 

ドロっと出てきて、

 

イキむこともなにもなく、

全てがあっという間に

終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

結果、私の第二分娩期は

10分以下だったらしい。

 

10-12時間といわれる

 

 

 

 

第一分娩期は8時間で、

 

普通2-3時間かかるという

第二分娩期は10分。

 

 

いかに一般的なデータというのは

あくまでも概論で

 

誰にでも当てはまるもの

ではないかが分かる。

 

 

 

 

ベビが産まれる瞬間、

身体の中の内臓も何もかも

出てしまったような気分だった。

 

 

 

 

 

 

元気な産声を上げる、私のベイビー。

 

産まれたばかりの、

まだ何も分からずに

 

泣き続けるベイビーガール・・・!!!

 

 

彼女が私の

お腹の上にのせられて、

 

無事生まれたことが

確認できたとき、

私はさっきのPleaseの連呼から、

 

 

Thank youの連呼に変わっていた。

 

 

 

 

Thank you!!! Thank you!!! Thank you!!! 皆さん、ほんとにありがとう・・・!

 

 

 

ベビの命を救ってくれて、

ありがとう。

 

 

私はもう何も望まない、

これ以上の幸せなんかない。

 

 

 

 

ありがとう、ありがとう・・・。ありがとうございます・・・。

 

 

 

 

 

 

ベビの頭がつかえて出てこないとか、

何時間もイキんだとか

 

 

 

 

いろいろな人の体験記を

読んできた私としては、

自分の出産はあまりにも違った。

 

 

 

 

私の場合、

ベビの産まれてくる力がすごくて、

私は何もしていないというくらいだったから。

 

 

 

こんなお産になるとは

想像もできなかった。

 

けれどきっと出産って、

誰にとっても

 

そんなものなのだろう。

 

不確定要素が多く、

十人十色。

 

 

誰として同じ出産はない。

 

 

 

 

ちょうど妊娠生活が

人それぞれ違うのと同じように・・・。

 

 

 

 

それでも、

たとえどんな出産でも

大仕事だし、すばらしい。

 

私はそう思う。

 

 

 

 

ふと我に返り、

臍帯血のことを思い出す。

 

「臍帯血は?」と夫に聞く。

 

 

「無事にたっぷり採れたよ。心配ない」

と言われ、ほっとする。

 

 

 

 

その後は死んだようになって

眠るのかとばかり思っていたけれど

 

 

全然眠くなくて、

頭はすっきりと冴えわたり、

 

夫に一生懸命

 

ベビの頭が出る感触のことを

話し続けた。

 

 

 

「君を誇りに思うよ。ほんとに、ほんとによくやった。」

 

夫の言葉にしゃくりあげて泣く。

 

 

私の顔をなでながら、

そういう夫も、

思い切り泣いていた。

 

 

 

 

 

続く・・・。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


にほんブログ村 恋愛ブログ 国際結婚へ タイ・ブログランキング 人気ブログランキング

 

ランキングに参加しています音譜↑クリックで、応援よろしくおねがいします(^O^)/