3月17日のペナンの巻きで、昔、ペナンからフェリーでバタワースへ渡り、マレー鉄道、タイ国鉄を乗り継いでハジャイへ向かったという思い出話を書きました。そのとき脳裏に甦ったのが、タイ国鉄を舞台にした密輸の光景。いかにもタイらしい、不可思議な出来事でした。
先ずはペナンの対岸、マレー鉄道のバタワース駅です。ここから数時間かけてマレーシア・タイ国境の駅、パダン・ベサールに向かいました。写真でもわかるように電線がありません。全線が電化されていないディーゼル列車です。まったりとした鉄道旅でした。
パダン・ベサール駅がマレー鉄道の終点で、ここでタイ国鉄に乗り換えました。しかし、この写真、いったいなにを撮ろうとしたのでしょうね
我ながら理解に苦しみます。この頃、写真心はほとんどなく、タイ国鉄という非常に美味しい素材を前にしながらほとんど写真を撮っていません。なんてもったいないのでしょう
さて、パダン・ベサールでタイ国鉄に乗り換えると、マレー人の中年カップルと何人もの子供たちが先に車内に乗り込んでいます。そしてその周囲にはなぜか無数のダンボール箱が。
これは別のときに、タイ東北部のラオス国境の街、ノーンカイで撮ったタイ国鉄の写真です。パダン・ベサールで乗った列車もこんな感じでした。
密輸列車に戻ります。待つことしばし。列車はそろりそろりとパダン・ベサール駅を離れます。そしてしばらく走ると、草原のようなところでおもむろに停車。外では小型トラックが待ち受けていました。
列車に乗り込んだマレー人の子供たちは、周りに置いてあるたくさんのダンボール箱を小型トラックの男たちに手際よく渡します。そしてすべてを渡し終えると、中年カップルといっしょに素早く列車を降りて行きました。
あっという間の出来事でしたが、事が終わるとタイ国鉄の列車はなにごともなかったかのように、ハジャイ目指して動き始めたのです。
せっかくなので、ハジャイに着いた翌日に向かったプーケットの写真を何枚か。これはプーケット・タウンで見かけた象さんです。なんか可愛いですね。
タイ南部最大の都市、ハジャイは密輸と売春で発展した街と言われています。街角の露店には密輸品が堂々と並び、ホテルのメイドの数より多いと言われる娼婦たちは、禁欲的なイスラム国家マレーシアから息抜きにやってくるマレーシア人の男たち相手に稼ぎます。人間の欲望がすべておおらかに肯定されるタイらしい光景と言えるのかもしれません。
オートバイに乗って島の郊外にあるイスラム教徒の村を訪れてみました。
しかしそれにしても、タイ国鉄を舞台にすべてが手際よく行われた密輸の光景。タイ国鉄のスタッフ全員を巻き込んだ仕事なのでしょうけど、日本ではちょっと考えられないですね。規則規則でがんじがらめに縛られ、窒息しそうになっていた私にはとても痛快な出来事ではありました。タイに嵌る大きな理由のひとつが、タイ社会のこういったすべてに緩やかな側面であることは否定できないのだと思います。
引き続きイスラム教徒の村の写真です。タイに頻繁に通っていた頃、私の興味の大きな部分は、タイ南部に暮らすマレー系のイスラム教徒のことでした。なぜかというのはまた後日、機会があればお話ししたいと思いますが、ここはガイドブックにも載っていて旅行者でも比較的簡単に訪れることのできる場所でした。
典型的なマレー半島の田舎のカンポン(マレー語で集落の意)なのでしょうか。平和で牧歌的な光景ではありました。
それにしても、この頃、タイ国鉄は何度か利用していたのですが、写真がほとんどありません。先日、NHKのBSでカメラマンの中井精也さんのタイ鉄道の旅を放送していましたが、「ああ、いまタイを旅してこんな写真を撮ってみたい」とつくづく思いながら見ていました。