「台湾漫遊鉄道のふたり」 楊双子著、三浦裕子訳

 

 

面白かったです!

昭和13年から14年にかけて台湾を旅したという、「架空の日本人女性作家の台湾漫遊記」という形を借りて、現代台湾の女流作家が、当時の台湾グルメ、鉄道旅、そして台湾人と日本人との間の友情と愛情、そして摩擦を描いた秀逸のエンターテインメント本です。

 

どういう本かというと、

「炒米粉、魯肉飯、冬瓜茶……あなたとなら何十杯でも――。

結婚から逃げる日本人作家・千鶴子と、お仕着せの許婚をもつ台湾人通訳・千鶴。

ふたりは底知れぬ食欲と“秘めた傷”をお供に、昭和十三年、台湾縦貫鉄道の旅に出る。」

(Amazaonの紹介文より)

 

漫遊記の書き手でヒロインの青山千鶴子は26才。

著書「青春記」が映画化され、台湾でも大ヒットしたことで、現地の日本人婦人団体と台湾総督府に招待され、昭和13年に訪台。

 

1年間、台中市内に居住し、そこで現地の台湾人通訳、王千鶴と知り合います。22才の千鶴は、スーパー通訳であると同時に、スーパー秘書、スーパー家政婦としても千鶴子に仕えます。

 

なにより食べることの大好きな千鶴子のために現地の庶民グルメを教え、台湾縦貫鉄道で台湾のあちこちを旅し、ガイドブックには出てこないような美しい台湾を見せてあげるのです。

 

千鶴子はそんな千鶴に夢中になり、友達として接しようとするのですけど、なぜか千鶴は柔らかな笑顔でそれを拒否。

千鶴子は千鶴を好きになればなるほど、千鶴の拒否に苦しんで行く。

 

千鶴子は行かなかったけど、私は行った平渓線(ピンシー線)の十分駅

 

この本、国際的な評価も高く、2026年 国際ブッカー賞受賞(イギリスかアイルランドで英語に翻訳された本を対象とした世界的な文学賞)。

第75回全米図書賞・翻訳文学部門受賞

第10回日本翻訳大賞受賞。

 

読後感は凄くいいです。極上の台湾料理を食べた後のような心地になりました。

苦い部分、深刻な部分もあります。

昭和13年というと日中戦争が泥沼化し、長期化していった頃のこと。台湾人の日本人に対する感情も当然悪化していった時期でもあります。

でもそこは物語の核となる部分ではありません。

何よりも楽しくて美味しい物語。摩擦を超えて握り合う手の美しさに救いと感動もあります。

 

また、この本、「百合文学」の要素も指摘されています。

「百合文学」という言葉、初めて聞いたのですけど、AIによると、「女性同士の繊細な絆や関係性、あるいは恋愛感情を主軸に描く文学・創作ジャンルの総称です。明確な肉体関係に限らず、友情と恋愛のあいだに揺れる曖昧な情動や、精神的な結びつきを深く掘り下げるのが大きな特徴」とのことだそうです。

 

個人的には、やはりグルメの部分ですね。

9章での、宴席料理を指揮する「総舗師」と、千鶴子・千鶴連合軍との間の料理対決のパートは、ぜひぜひ映像で見たいですよ。

 

嬉しいことに、台湾でドラマ化されるということです。

 

千鶴子に食べさせてあげたくなる客家のローカル・スイーツ。淡水で。

 

ドラマでは、王千鶴は誰が演じるのでしょう?

日本語ペラペラの若手台湾女優さんというと、選択の幅が限られてしまいますね。

日本語能力の有無と22才という年齢のハードルを離れて、自由に想像してみました。

 

私の大好きな曾之喬(ジョアンヌ・ツァン)?

彼女のイメージで読むと楽しくなりそうなので、彼女のイメージで読みなおそうかな。

活字でしかわからない未知の台湾グルメを映像で見るのも楽しみです。

 

台湾鉄道旅、私は10数年前に家族で九份を旅したときの、台北-瑞芳(ルイファン)間と、一昨年、ひとりで十分から九份を巡ったときの、台北-瑞芳-十分ぐらいしか経験がないので、千鶴子と千鶴が辿った旅路を巡る旅がしてみたいです。

 

九份への表玄関でもあり、平渓線(ピンシー線)への乗換駅でもある瑞芳(ルイファン)駅の老街側。

 

 

最後です。

九份の人気魚丸店。魚丸とは白身魚のすり身の料理。混んでいて入れませんでした。