先日は旗師について説明したのでヤフオク業者について説明していこうと思います。
■過去の話はこちら
最近(といっても10年位はたつ)登場したヤフオク業者
ネットでは
「刀屋が売れない刀を流しているのでゴミしかない」
「欠陥がある刀を対面販売しないでネットで売っている」
「安いけど刀屋が売っているのだから掘り出し物はない」
「旗師のようなアンダーグラウンドな連中だから近づいてはいけない」
なんて言われています。
実際のところ、どうなんでしょうね?
最近は店舗型刀剣商もなかなか刀は売れません。
ですから市場では店舗型刀剣商はそれほど購入意欲は旺盛ではありません。
信じられないかも知れませんが、「これ〇〇真正だろう」と思っていても誰も声を挙げない事も多いです。
だって、半年かけて保存出して鑑定書ついても、今は店舗型刀剣店でも刀の動きは悪いですからね。
みんな手元に運転資金として現金を持っておきたいので、半年以上先の売れるかどうかわからない刀なんてなかなか買えません。
そんな業者市場で購入意欲が旺盛なのは「ヤフオク業者」と「輸出業者」ではないでしょうか?
正直、多くの市場では彼らがいなければ業者市場が機能しないような気がします。
彼らの戦略は「薄利多売」
目利きをしながらの仕入れでは数を揃えるのは難しいので、安い刀を片っ端から仕入れていきます。
そうやって大量に仕入れた刀の画像を簡単に撮影してヤフオクに1円出品するのです。
その結果、業者市場での仕入れ額とヤフオクの落札金額の差-手数料で利益は5000円とか1万円・・・
下手したらマイナスなんて事も多いようです。
彼らは刀剣商が本業という人は多くは無いようです。
本業はカード会社(デュエル的なやつ)とか、宝石商、買取店と色々です。
色々な商品をヤフオクで売っている中で、儲かりそうだから日本刀もヤフオクに出すみたいな感じですね。
※日本刀だけ別アカで出品するとかなので他の出品物を見ても分からない事が多いです
当然、別に刀専業ではないですから「刀は良く分からない」なんて業者も多いです。
市場で「五家伝って何?」とか言っている人たちも大体このあたりでしょうか。
刀が分からない、つまり価格が分からない業者が多いのでプライシング(価格設定)ができない業者も多いようです。
だからヤフオクの競りの市場原理に身を任せ薄利多売を続けていくのです。
余談ですが、こういうビジネスをマーケティングの世界では「焼畑農業」といいます。
あのアフリカの未開部族がやっているアレですね。
焼畑農業というのは、農地を焼いて炭を肥料に農作物を育てる原始的な農業を指します。
1度目は生えている草を燃やして、その灰を肥料に作物を育てるので収穫できます。
しかし、焼畑してしまった土地は栄養がなくなり数年間作物が育たない荒地となってしまいます。
その結果、砂漠化が進み、食糧難やそれに伴う部族抗争のような紛争が発生します。
これをビジネスに当てはめると以下のようになります。
①業者市場で仕入れた刀をヤフオクのような市場に大量投下します。
↓↓
②最初はある程度利益が取れるのですが、プライシング(価格設定)を顧客にゆだねる為にどんどん価格が下落していきます。
↓↓
③それが続くと、お客様はヤフオクでの利益が低い価格や、あるいは損切価格が基準となり相場はドンドン落ちて利益率も落ちていきます。
↓↓
④それに引きずられて、日本刀全体の末端価格も下落して既存の刀剣店自体も刀が売れなくなって淘汰されてきます。
結果、市場は焼け野原、持続性もなくなり、勝者のいない戦場となる訳です。
まさにレッドオーシャンの極みですね。
彼らヤフオク業者も自らが放った火に囲まれているのか、業者市で見る限りでは以前ほどの勢いはありません。
1商品で損失が出てもトータルで利益が出れば良いようなビジネスモデルを続けると、お客様は損失が出ている価格を相場と誤認しますから相場はドンドン下落します。
そうなると付加価値モデルではない業態では利益を取るのは当然難しくなりますよね。
自明の理です。
もし10万円位で刀が買えても、研磨に出したら10万円~、外装工作で10万円~
使えるようにするには合計で30万円くらいは掛かりますよね。
その金額を出せば、きちんとした刀剣店で刀が買えてしまいます。
当店や夕星さんの所ならその半額で、研磨済み+外装新品でいけますよ。
ですから、お客様がヤフオクの焼畑農業系のアカウントから刀を買う理由はあまり無いように思えます。
ただ唯一のメリットを挙げるならば、「安い掘り出し物がある」という事があるでしょうか?
「日本刀に掘出物は無い」
なんてまことしやかにネットで説く人は多いですが、そんな事はないです。
最近は体力が無い刀剣商も多くなり仕入れ意欲も弱めですし、ヤフオク業者は刀自体を知らない人が多いですから何でも1円で出品します。
だから「掘出物」はあります。
ただ、前述したように工作費は掛かりますから、掘り出し物が見つかっても予算内で納まるかは難しいですね。
先日米国が特別軍事作戦を行ったベネズエラの原油と同じですね。
彼らは、原油があったとしても自国に精製プラントが無いので重油・経由・ガソリンに分離できずにマネタイズできず貧困国になっていました。
素材があっても、最終製品にできなければどうにもならないのです。
日本刀だって同じ話です。
いくら掘り出し物でソコソコの刀が見つかっても、研磨して外装を付けないと何の価値もありません。
しかし研磨・外装というインフラを使うには刀身の倍以上の莫大な費用がかかります。
もっとも、これはヤフオク業者や、そこから購入したユーザー様だけの問題ではありません。
既存の刀剣商であっても、この下落した刀剣相場では余程の刀でないと研磨・外装に費用を掛けたらペイできないでしょう。
しかも昨今は、研磨以外の職方は高齢化してそのインフラ自体も維持できなくなりつつあります。
比較的若い職人が多いと言われる研磨にしても、近年は弟子を取る職人も減り、需要に対しての供給が追い付かない状況です。
このレッドオーシャンの中で生きていこうとする限りは、この八方塞がりの状況からは抜け出せません。
だって焼畑農業で持続可能な相場をぶっ壊してしまったのですから。
時代はSDGs、これだけサステナビリティ経営と言われているのに愚かなことです。
※サステナビリティ経営=持続可能な経営という意味
このレッドオーシャンから抜け出す方法はただ一つ
技術力を背景とした製販一体体制の構築し、新市場で戦えるだけのコスト優位性を持つことです。
ベネズエラのように原油だけ扱っていてもダメです。精製プラントも自前で持たないと。
そして、ガソリンが安価に普及すれば大衆にもモータリゼーションが始まりますから消費量は莫大なものとなります。
日本刀も同じです。
刀身の倍以上かかる「研磨」と「外装」が内製化できれば、日本人の半数を占める年収350万円前後の層にアクセスできます。
今までの刀剣店は「愛刀家」という狭い市場だけがターゲットでした。
あるいは半分ジャンクみたいな刀を、焼畑農業していました。
しかし、この正社員の中央値の年収層という市場を持続可能な形で取れれば一気にブルーオーシャンが見えてきます。
1970年代のモータリゼーションの如くです。
しかし、それを行うには「技術」に基づく「付加価値化」というブレイクスルーを起こさないといけないので、参入ハードルは低くはないと思います。
当店と夕星さんは、日本刀界隈のエクソンモービルを目指すべく企業努力を続けていこうと思います。
明日以降は残務処理をしようと思います






