<関連記事>年収3000万円も?!パイロットの年収を大公開!

 

 

最近はウクライナ情勢のせいもあってか、コロナ関連のニュースも少なくなってきているように思えます。

 

カナダでも新規感染者数が少し前に底を打ったと思ったら、最近はまた一気に増えてきている状況ですが、ニュースでも前のように大々的には報道されてなく、もうインフルエンザみたいに身近な病気になってしまった感覚です。

 

 

それはさておき以前パイロットを揶揄するジョークとして、「パイロットは先のことを予見しながら飛行機を安全に操縦するのが仕事なのに、実際の生活は人々の旅費という必要不可欠でない出費に頼ってる不思議な人種」というのを耳にして、まさにその通りだと笑ってしまいました。

 

景気に作用されやすい航空業界で働く以上、万が一のためのバックアッププランの重要性は前から考えていましたが、このコロナはその重要性を一層認識させてくれました。

 

 

そこで今回は、パイロットという職業の将来性について考えてみたいと思います。

これからパイロットを目指している方の役に立てば幸いです。(あくまでも個人的な見解になるので、参考までに...)

 

 

 

まずはポジティブな面から。

大方の予想は、今後も航空業界の需要は伸び続け、それに従ってパイロットの需要も増えるというものです。

米航空製造大手のボーイングの予想では、2040年までに世界中で新たに61.2万人のパイロットが必要になるとしています。ボーイングのライバルである欧州エアバスも2040年までに55万人、訓練用のシミュレーターの製造大手のCAEも2030年までに26万人のパイロットが新たに必要になるとしています。ちなみにボーイングの予想では整備士も62万6千人、客室乗務員も88万6千人新たに必要になるとしています。

 

(資料:ボーイング

 

上記のエアバスのレポートによると、2040年までに3万9千機もの新たな飛行機が必要になると予想しています。これらの飛行機の平均寿命が20年から25年であるとすると、2040年後もかなりの数のパイロットが必要になる事になります。

 

将来的にはリニアモーターカーやハイパーループなど新たに競合する交通機関の登場で、主要都市を結ぶ短距離(東京-大阪、北京-上海、トロント-モントリオールなど)は更なる競争を強いられると思いますが。しかし長距離の路線は、現在の技術的にスピードと容量を兼ね備えた飛行機以外の交通手段がない/合理的でないので、飛行機の需要は下がらず、むしろ交通量の増加によって需要も増えると考えられます。

 

 

 

次はマイナス面。パイロットの需要を作用するであろう事柄を見ていきます。

 

まず前々から聞いていたのは、「パイロットという職業には10年に1度、解雇の波がある」ということです。

しかしこれは何もパイロットに限った事ではなく、リーマンショックやコロナなどで需要が落ち込むとどの業界でも人員をカットする必要が出てくるのは当然です。しかし先ほども書いたように、娯楽・旅行業界は景気が落ち込んだ際に受けるダメージも大きいので、そのしわ寄せがパイロットに来るのも仕方ないと思われます。

 

 

個人的に一番心配しているのが、技術の発達によりコンピューターやロボットが飛行機を操縦するようになり、パイロットという職の必要性がなくなるです。

米FAAの資料によると、ニューヨークからロンドンの7時間のB777でのフライトで、乗務員全体の給料は200万円にもなるとされています。その中でもパイロットの給料は大きいので、航空会社にとってパイロットの数を減らす事は大きなコスト削減につながるのです。

 

「いや、さすがに操縦ぜんぶ自動は無理でしょ」なんて思われる方もいるかもしれませんが、実際に飛行中はほぼ自動操縦ですし、飛行機自体(オートパイロット)の操縦で着陸することは日常茶飯事な事です。人間のパイロットは滑走路を視認して着陸するので、霧などで視界がほぼゼロな状況では視界に頼らず、瞬時にデータを分析/コースを修正できるオートパイロットが着陸するのが、むしろ当たり前なのです。このような自動着陸は1965年から実用されている技術で、決して難しい事ではありませんし、実際にエアバスは自動タキシング(地上走行)、自動離着陸のフライトをA350で達成しました。

 

 

また、こんなロボット(↓)のように、パイロットの代わりにロボットを搭載させ、現在の機体を全自動化する事も技術面では可能です。

 

 

逆に技術面で全自動になるためにクリアしなくてはいけないのが、タキシングの精度、他の関係各所(航空管制、他機、ディスパッチャーなど)とのコミュニケーション手段、空港や航空管制設備のアップグレードが必要になってきます。

例えば地上での操縦。現在、ゲートから滑走路まで行くのに管制官と交信をし、他機や周りの状況を認識し、誘導路の上を正確にタキシングしなくてはいけません。近年になり電気自動車のテスラなどにも搭載されているカメラなどを使った自動運転技術の向上により、タキシングの部分は技術的には可能になって来ています。しかし実際の運航では管制官との音声でのやり取りや、他機を認識することも必要になってくるので、このような出発ゲートから到着ゲートまで全自動というのはまだ先の事です

 

そのレベルまで達するには、各誘導路に何らかの誘導マーカー/センサー、機体同士が距離や互いがどこへ向かっているか認識し合えるネットワークシステム、管制官/管制システムが機体をコントロールできる空港設備の構築、など数々の新たな技術と投資が必要になってくると思います。何も見えないくらいの霧の中の羽田空港で、指示をすべてデジタルで受け取る最新の全自動の機体と、管制官と音声で交信しなくてはいけない機齢30年のB373がごった返してタキシングしている様子を想像してもらえれば、その大変さが想像できるかと思います。

その上、すべての航空会社が高い費用を払って最新の機体にアップグレードするのかは疑問です。技術的、そして設備的にパイロットの需要に影響を与えるレベルまで達するには、30年はかかるのではと個人的には考えています。

 

全自動操縦の壁は他にもあります。1つ目がパイロット組合の存在。パイロット業界は組合がとても強い事が多く、全自動の機体を導入しパイロットの数を減らそうとする航空会社側の意向に猛反発すると考えられます。どの辺で交渉が落ち着くかは各組合にもよりますが、「全自動の機体でも飛行中はコクピットにパイロットが最低1人」や「全自動機の割合が全体の機体の〇〇%を超えない」なんて感じになるんではと想像します。

2つ目が一般の乗客が全自動の機体をどう受け入れるかです。実際に、今「パイロットが乗っていない飛行機に自信をもって乗れますか?」と聞かれて「はい」と答える人はゼロに近いと思います。これはいくら全自動の機体が無事故で運航実績を重ね、安全性を立証できても、簡単には超えられない壁かも知れません。

 

もっと近い将来でパイロットの必要人数を減らす試みとして、エアバスは長距離フライトのパイロットの数を半分に減らすこともできると予想しています。大抵の場合8時間を超えるフライトにはパイロットが3人、もっと長いフライトになると4人も乗務し、交代で休憩しながら操縦します。しかしエアバスの案では、巡行時など比較的にタスクが少ない時間帯にコクピットに常時2人のパイロットがいるのではなく、AIや地上とのネットワークを駆使しながら1人のパイロットが操縦をすることで、フライトに必要なパイロットの数も半減できるというわけです。実際にエアバスは香港のキャセイパシフィック航空と協力して、巡行時1人パイロットでの運航を2025年にも始める考えです。昔の飛行機にはパイロットの他に機関士が乗務していましたが、コンピューターの監視能力の発達で機関士の必要性も薄れて、今では2人で操縦するのが当たり前になりました。パイロットが1人で操縦する日が当たり前になる日もそう遠くないのかもしれませんガーン

 

非常時には地上にスタンバイしているパイロットが遠隔操作もできるような仕組みも考えられていて、このようなパイロットを減らす試みは貨物航空業界から始まり、安全性が十分に確立されてから旅客機の方にも少しずつ採用されてくるのではないかと考えます。

 

次に環境問題

どの業界でも環境への負荷が大事な焦点になってきている今の時代、二酸化炭素の排出量が多い飛行機は環境への負担が大きい乗り物と批判されています。Google Flightなどでは、自分のフライトがどれくらい二酸化炭素を排出するのかを表示して、環境意識の高い人々がフライトを選ぶ基準の一つになっています。

問題はそういう人たちが環境への負担を理由に飛行機に乗るのを止めるか否かです。環境意識の高いヨーロッパ発祥の「フライトシェイム/飛び恥」という言葉もあり、飛行機を利用することに反対する社会運動も出てきおり、実際に飛行機の利用数が減ったというデータもあります。しかしこのような運動は鉄道網も発達しており、距離的にも妥当性のあるヨーロッパならではの事で、それが世界中に広まるかというと疑問です。

 

環境面で一番影響があると思われるのが燃料代です。今起きているウクライナ情勢の影響や、将来的に石油が枯渇してくるに事によって燃料代の高騰し、航空券代も上がってきます。それに伴い飛行機をけん制し、旅行先を近場に変更する人は少なくないと思われます。廃油や植物を原料にし、化石燃料の代わりになるSAF(持続可能な航空燃料)は値段も高く、現時点で切り替えもなかなか進んでいない状況です。しかし各国や世界的な枠組みによる航空業界への温室効果ガス排出量の規制で、SAFの需要が増えるにつれ値段も下がってくると思われるので、長期将来的には現在レベルの燃料代に落ち着いて来るのではないかと思います。参考までに、現在発表されているSAFの使用目標としては、JALが2025年に全燃料搭載量の1%、2030年に10%をSAFに置き換えるとしていて、多くの航空会社が2050年までにカーボンニュートラルを目指しています(つい最近発表されたIPCCの報告書によると、2050年でも遅い気がするのですが...)

 

今回のコロナで一層明らかとなったのが、感染症の流行は、旅行業界には命取りになるという事です。今回のコロナのような世界的な感染症の大流行だけでなく、過去に起こった限定的なSARSや新型インフルエンザの流行でも、その地域の航空会社には大打撃となります。実際に2003年のSARSの流行では、アジア太平洋地域の航空会社は年間売上の8%を失い、60億ドル(6千億円)の損失につながったとされています。今のCOVID19も収まっていない状況ですが、次の流行は人類としてもっと上手に対応できるのを祈るばかりです!

 

 

これらはあくまで個人的な考えなので、まったく別の未来が待っている事は十分にあります。非常に言いにくい事ですが、個人的には今から生まれてくる世代が定年までパイロットとして働くのは今より難しくなるのではと思っています... 自分の予想が外れる事を願っています。

 

皆さんの考えもコメントでお聞かせいただければ嬉しいです!