夏の終わり
  週末を選んだ
 
 第三京浜を通り
  海へ向かう

 カーステレオからは
  懐かしいGSの曲

 海岸までには ちょっと歩く
 彼は無言のまま ひとりで先へと行ってしまう
  
 私は追いつこうと急ぐ
 心の中では「待って・・・」と言っている
 「私の手を引いて一緒に歩いて」 と

 海岸に人影はなく
 小さな男の子達だけが砂遊びをしている

 ふたりで眺めた海は
 心なしか 涙色をしている

 「帰ろうか」と彼
  無言のうちに私は振り返る

 打ち寄せる波の音を背に
 ふたりは元来た道を引き返す

 雨が降り出す

 車の中 沈黙だけが存在している

 小雨の中を静かに進んでゆく車
 
 言葉は 心の中に溢れているのに
 どうしても 声にならない

 本当はもう気付いている お互いに
 沈黙の意味を

 でも それを口にしたら 現在(いま)
 が 崩れてしまう事を 知っているから

 ふたりで見る 最初で最後の海

 その光景は永遠にその場所に
 置き去りにされたまま

 夏の終わりに見た海は
 ふたりのすべてを知っていたのかもしれない

 二度と訪れない 夏の日

                         2004.8.31