第十六章 地球の破滅

 予期されていたことであったが、恐れていたことが現実になった。地球表面で複数の核爆発が観測されたのである。試算したところによれば、今後10年程度は地表に太陽光が届かず「核の冬」になるということであった。人類の生存は絶望的、人類どころか地球の生態系は修復不能の状態に陥った。

 エイリアンの首長からは「いずれこうなった。君たちの行動は正解だったな」と通信があった。桐谷に対し「地上が復元したら、戻るのか?このまま金星でともに生きる道もあるのだぞ」と。このとき、桐谷は60歳になろうとしていた。望郷の念やまずというところであったが、「いまは時間をもらえまいか?」とだけ答えた。

 コロニー群では、期初の二千万人の成人入植者の中でも比較的高齢であった者たちに死者が発生していた。成人全員に避妊術を施しているため、全人口は減少の一途を辿っていた。

桐谷も自身の老いと対面し、主だった施政官から若いものを後継者として育てておこうと考えた。これまでは桐谷一人でコロニー群を統制してきたが、若き施政官1名では心もとない。そこで3名の施政官を選び合議制にてコロニーを統制してゆくことにした。かれらに人類1億人の命運を託すことになる。エイリアンの首長の言葉に関わらず地球へ帰還することになれば、かれらが地球を蘇生する先兵となる。いまは冬の惑星であっても、時間が経てば地上に太陽の光も届いてこよう。そこに「平和」の旗印の下、以前にもまして人類は繫栄するだろう。