先月になるが、オステオパシーの筋膜テクニックのクラスに参加した。
講師はイタリアの代表的オステオパシードクターであるパオロ・トッツィー先生だった。
オステオパシーにテンセグリティーモデルが用いられていることは以前から知っていたがそれ自体を学ぶことは今回がはじめてだった。
テンセグリティーモデルとはテンショナル・インテグリティーから作られた造語で
もともとは彫刻家であるケネス・スネイルソンの造形物に触発された建築家バックミンスター・フラーが自分の建築に応用したのが始まりである。

 それは圧縮と張力の均衡の上で成り立つ構造物のことを指す。実際はスネイルソンとフラーの構造は大きく異なり、フラーは形だけでどう見ても剛構造であるのに対してスネイルソンの造形は圧縮材どうしが接触することが無い見事なまでの複合的な柔構造である。
さてその建築学的なあるいは彫刻で用いられていたテンセグリティーモデルが直接オステオパシーに用いられたかというとそうでも無いようだ。
その間にワンクッションある。それはハーバード大学医学部のイングバー博士が1998年に生物の構造が全てテンセグリティーで出来ているのだと主張したとことろにある。建築的概念を生物学的に応用したということだ。その段階でテンセグリティーは圧縮と張力の複合的均衡で成り立つプラスそれが階層的につみ重なったものとみなされるようになる。つまり微小な細胞単位の階層から、組織、臓器、全身に至る階層まですべてがテンセグリティーであるという事になる。なかなかダイナミックで面白いコンセプトだ。

 さてオステオパシーが引用したのは建築学的なフラーのモデルでは無くスネイルソンやイングバー博士的なモデルであろうと勝手に推測する。
このテンセグリティーモデルを用いて身体を見るときに骨があって、関節があって、骨を動かす筋肉があってというような単純なマリオネットのようなものではなくすべてが複合的に有機的に階層的につながった複雑なイメージが浮かんで来る。そのようなイメージで身体に向き合ったときにまるで次元が違った施術がもたらされる。このモデルは身体を扱う時にとても大きなパワーをもたらすようだ。似たような施術でも内容や結果は全く次元の違うものになる。意識の持ち方や物の捉え方というものは劇的に施術に違いをもたらすようだ。そこらへんがオステオパシーのみならずすべてのセラピーの秘めたるサムシングなのだろう。

 オステオパシーでは様々なモデルを使う。このテンセグリティーもモデルの一つにしか過ぎない。だから他のモデルを否定するものでは無い。使えるか使えないかが重要であるので使えて結果を出せればどのようなモデルでも問題ない。ただ人を束縛したり搾取するようなモデルがあったとしたらそれは問題である。(カルト団体に見受けられる。伝統宗教の教義も使い方によっては搾取と束縛のモデルになりうる。)

 オステオパシー的には構造的なテンセグリティーなのだろうがよりホリスティックに物事を捉えようとするときにそれだけでは不足である(ホリスティックという概念もモデルではあるけれど、、)。ホリスティックに考える場合構造的なテンセグリティーのみならず生体化学的な、精神心理的な、情報的な、微細エネルギー的にそれぞれンセグリティーが存在しさらに違った次元のカテゴリーどうし様々な単位でテンセグリティーで縦横無尽に繋がりあっているというダイナミックなコンセプトが誕生する。そういうホリスティック・テンセグリティーがあるとしたらそれがフィシオエナジェティックである。