【教育岩盤】揺らぐ人材立国⑤

偏見が狭める女性の進路

国の未来、多様性がひらく


2022/5/6(金)の日経新聞朝刊より


記事のポイント

・成績優秀な女子学生は入学金を免除。芝浦工業大は2022年度の入試から、女子限定の”大盤振る舞い”を始めた。

・女子の大学進学率は上昇傾向なのに工学部志望者が少ないことは日本の大学に共通の悩みだ。

・経済協力開発機構(OECD)の19年調査では工学系の高等教育機関の入学者に占める女性の割合は加盟国平均で26%。日本は16%で最下位

・理系科目が得意な女子は医師、薬剤師といった仕事内容や働き方が想像しやすい分野に進みがちだった。だが今、工学部卒の女性は産業界から引く手あまた。

・大学選びでも壁がある。東大生のうち女子は21年度で19.7%。東大は3割に高めようと懸命だが、「東大卒女子は婚活に不利」という俗論など、女子の挑戦意欲を冷ます土壌が強く残る。

・日本の大学の女性学長割合は20年で13%で、英米独の20〜30%を大きく下回る。

・米国の大学が奨学金や入試での配慮を通じて女性や黒人が少数派を積極的に受け入れるのは、高度な学びや革新的な研究成果の創出には人の多様性が欠かせないからだ。日本はその認識が薄く、教育の質やイノベーションを生む力を落としている。

日本の停滞と閉塞感の根底には人の能力が十分に発揮されていないことがある。教育を一新し、知を磨き行き渡らせることで国の将来をひらく。人材立国に再び挑戦するときがきている。


***********


まさに「先入観」「思い込み」=「ステレオタイプ」が影響している例ですね。


「ステレオタイプ」というと悪いイメージがあるかもしれませんが、ダン・アリエリー著『予想通り不合理』によれば、

「ステレオタイプ」とは前もって情報を分類しておく方法のひとつで、新しい状況に遭遇したときの脳の負担を減らすためのものなので、本質的には有害なものではないそうです。


ただ「ステレオタイプ」には、ステレオタイプを抱くと、抱いたほうだけでなくステレオタイプ化された人たちのほうも、押し付けられたレッテルに気づけば反応が変わる「プライミング」と呼ばれる影響があるそうです。


同書で、アメリカで行われた実験が紹介されていました。

※アメリカでのステレオタイプ:「女性:数学が苦手」「アジア人:数学と科学の才能がある」

・女性に「性別」を意識させてから数学の試験を受けさせると点数が低くなった。

・アジア系の女性に「女性」を意識させると数学の点数が低くなり、「アジア人」を意識させると点数が高くなった。


さらに驚くのは、ステレオタイプが、本来はステレオタイプ化されたグループに属さない人の行動にも影響を及ぼす場合があることです。同書によれば、

・(老齢でない人が)老齢をイメージする実験の後、歩くスピードが遅くなった。

・「礼儀正しさ」をイメージさせる単語を使った実験を受けた人は、実験のあと礼儀正しい態度をとり、「無礼」をイメージさせる単語を使った実験を受けた人は、実験のあと無礼な態度をとった。


「ステレオタイプ」は脳が本能的にやっていることなので、完全に影響を排除することは難しいでしょう。

ただ極力影響を受けないようにするために、本能的に頭に浮かんだことに即反応するのではなく、一瞬「立ち止まって考える」癖をつけたいですね。


追伸

「性別を意識」ということでいえば「女子校」か「共学」かで意識が違いそうな気がしたので、理系への進学率に違いがあるのか調べてみました。

「女子校は理系に強い」という調査結果もあるようですね。

https://chubukyoiku-labo.jp/girls-school/



「学びをよろこびに、人生にリーダシップを」

ディアログ 小川