心の隅に・・・

ずっと、残っているような

そんな恋愛を経験したこと

ありますか?

 

 

 

 

これは、ラベルの名曲ではなく

はかなげな恋のお話です。

 

 

 

『亡き王女のためのパヴァーヌ』

 

パク・ミンギュ 著

吉原育子 訳

出版社:クオン 

単行本:460ページ

 

 

 

 

愛の本質と人生を問う

      恋愛小説

 

誰かを愛するということは、

誰かを想像するということー

 

・・・魂の喪失と再生の物語。

 

サブタイトルで構えて

しまった…かも。

 

普段、手にすることのないような

純愛もので、分厚い本ですが、

「読書会」での課題図書のため

購入しました。

 

 

当時の80年代韓国はオリンピック

もっともっとと、天井知らずで、

資本主義に目覚めたばかり。

 

出てくる固有名詞は、

古い時代を象徴していて、

ビートルズの名曲などが

出てきたり・・・

 

アジア圏ならではの

ちょっとむせ返るような

ほこりっぽい独特な

臭気もかんじさせます。

 

 

「拝金主義」「学歴社会」と

「ルックス至上主義」の3拍子

を日常に求められる社会の中で

生きずらさを感じ、自らの

変える事のできない運命を

引きずりながらも、共に

時間を過ごした彼と彼女、

そして彼の3人の物語です。

 

今よりもっとルッキズムが

かなり激しかったようですね。

(今も韓国は至上ルッキズム

だと思いますが・・・)

 

後半に出てくる件(P430)

からも想像できると思います↓

 

ー 私が韓国で経験してきたことは

ひどく野蛮なものでした、野蛮です。

美しくなければ・・・

ノーメイクでは外に出るのが怖い

社会というのは・・・

銃を所持しなければ家の外に

出られない社会と同じです。

少なくとも女にとっては

そうです。

極めて野蛮な社会でした。ー

 

彼女とは、誰もが認める

ブス代表だったのです。

 

そこまで醜い彼女を愛した

ちょっとイケメン風な

主人公も、家庭の事情に

悩み、孤独を抱えた青年。

 

主人公の父親は、結局幸せを

掴み取れたのでしょうか…

 

心に闇を秘めた、不細工

代表のような彼女を愛した

ところが主人公の魅力でも

あり、人間力でもあると

思うんですが、応援したく

なるようなカップルです。

 

 

そしてもう一人、登場人物の

中で、唯一名前がついている

キーマンでもある友人のヨハン。

 

一言でいえば、すごく退廃的。

 

斜めに世の中を見ざるを得ない

ような境遇で育ってしまった

プロセスも読みどころです。

 

ヨハンのどこか冷めたような

シニカルさも魅力です。

 

ところどころに名言を散り

ばめて、確信を突いてくる

唯一無二な友人になって

欲しい存在です。

 

 

体験したことのない経験とは

言葉だけでは語れない深い

感情があるんだと改めて

共感。

 


さらなる上昇志向の社会に

なじめず、取り残されて

しまった若者たち。

 

望まざる感情に揺さぶられ、

空間と時間を共有した

3人の結末は・・・

どんでん返しが待っていました。

(ネタバレになるので

読んでみてくださいね)
 

 

読みどころ

「ストロベリー・フィールズ

フォーエバー」の章です。

 

 

 

青春時代を回顧するところに、

乾いた冬の空気と、白い世界を

思い浮かべます。

 

噛みしめるような思いと

押し込めた記憶を

感じ取っていただきたい

部分です。

 

 

確かに愛の物語だけで

なく、生き続けることの

軌跡を描いた魂の喪失と

再生の物語なんだと。

 

 

 

 

クラッシック、ラベルの名曲

『亡き王女のためのパヴァーヌ』

を聞きながらブログを書いて

いますが、村上春樹の世界観を

彷彿させるような、さらには、

韓国ドラマを想像するような

…そんな印象も強く残りました。

 

読書会では男性陣は、一様に

冷めた感想でした。

 

パク・ミンギュってあの

「カステラ」を書いた人だった

よねって・・・

なんか違う人の作品みたいって。

 

ハイ、その通りですよ。

村上春樹さんのファンの方

には、おすすめできません。

 

春樹ISMは隣国の韓国にも

渡っていたようですね。

 

個人的には最後の章の

その後が…

これはどういう事なのか?

すごーく気になりました。

 

 

 

ここまで読んでいただき

ありがとうございました。

 

 

ちょっと高貴な印象をまとった

ような本の装丁でもある

今日のテーマカラーです。