東海林・菅井の『通史足尾鉱毒事件』・48
著者菅井は、古河グループが他の企業グループよりも公害がひどかったと強調するために、自然条件を無視して次のように説明します。
「三井、三菱、住友、安田の4大財閥と古河とさしたる違いはなかったかもしれない。しかし、その発展の犠牲に供された人々の生活と自然とが後日まで白日の下に曝け出されていた例は他には見られない」
これは全くデタラメな嘘にすぎません。
まず三菱は、少なくとも昭和の初期までは、大きな公害事件は起こしてはいないはずです。安田は銀行と保険会社以外経営していないので、公害とは当然無関係です。
「その発展の犠牲に供された人々」は、住友の別子銅山の公害を調べれば、古河よりもはるかに多く、そして犠牲が長期にわたったことが分かります。
どうぞ自分で調べてみてください。
藤田組の小坂銅山も、後に日立グループに発展する日立鉱山も、住友の別子銅山も煙害ですから、製錬所が稼動している限り続きます。
それに反して古河の足尾銅山は、洪水があるときに、冠水した部分だけ田畑が被害を受けるのです。規模が全く違うのです。
しかも、古河は、加害者責任をすぐに認めて示談交渉に応じ、示談金を払い、政府の命令に従って公害防止工事を履行し、その他の会社よりも短期に問題を解決しています。
これも自分で調べてみてください。
「自然を後日まで白日の下に曝け出した」というのは、足尾の山を禿山にしたことを意味しているのでしょうが、いくら植林をしても樹が育たなかったという事実を無視しています。
この山の土壌にその原因があるのですから、自然条件の違いを考えない的外れな非難にすぎません。
明治以来、日本という国が欧米先進国に追いつくために、必死に工業化を図ってきたことを菅井は全く考えず、ただただ、政府と企業は悪で被害農民は善だと決め付けて自己主張しているだけです。
何とまあ単純な頭脳の持ち主なのでしょう。