金銭感覚の異常性・27 | 足尾鉱毒事件自由討論会

金銭感覚の異常性・27

田中正造が借りたお金その他、支払うべきお金を払わずに踏み倒したケースは、おそらく相当な数にのぼるだろうと思われます。


収入がないのに働かず、ホームレスなのに政治活動と称して、人力車や汽車で関東地方をあちこち動き回っていましたから、普通の人より交通費や宿泊費が多かったはずです。


のみならず、無銭の彼なのに、何と知り合いの費用まで自分が払うからと約束し、当然ながらこれを踏み倒すのですから、本当に空いた口がふさがらないのです。


宇都宮駅前の近江屋旅館が谷中村の川鍋宅の正造に宛てた、明治39年12月20日の手紙です。


「しばらく滞泊していた柴原君、宿泊料金30円余(今の30万円くらい)、未だ本人よりお支払いなく、過日ご面会(正造と)の折、あなた様が弁償されるということでしたが、その後、今か今かとお待ちしておりましても、全く約束が果たされて下りません。国税の納付に当てるつもりでしたが、役場からはきびしく督促されており、差し押さえ処分を受けるかもしれません。このことをご洞察の上、あなた様からぜひぜひお立替え下されたく、ひとえに願い上げ奉ります」


柴原という人は、おそらく正造の仕事に関与していたのでしょう。旅館側は、代議士だった正造にお金がないなどと考えなかったでしょう。当時の元代議士は「雲の上の人」でしたから。