資本側優位の労働市場
昨年来、政治、経済、教育、社会の各分野で、次々と話題が続いた。そうした中で気がかりなのは、労働問題である。非正規社員やサービス残業の増大、過労死、低い賃上げと成果主義の浸透、そのうえ今国会提出は見送られたが、一定収入以上のホワイトカラー残業代ゼロ法案まで考えられており、労働側より資本側優位の状況が続いている。企業は高収益にもかかわらず、これでは経営資源として資本を重視し、労働力を軽視しているとしか思えない。
このままでは、正規社員との賃金格差の大きいパートや派遣労働者の増加などに伴う格差社会はさらに広がると思われる。厚労省の就業形態別統計をみると、全体の約3分の1を非正規社員に依存している。パート労働者のほか契約社員や派遣労働者などである。一方、正社員に対しては成果主義、年俸制の導入を進めている。長期的にこうした状況が続けば、社会の活力がなくなりかねない。
高度成長期にはみんなが良くなろう、生活向上をはかろうと、全体に明るい希望があった。それが現在では、企業はグローバル化に伴う大競争を生き延びるため、コスト削減の経営改革を進めざるを得ない。このため、かつてのような元気も希望もない。実際、人材教育の専門家も企業の中で中高年がまったく元気がないのに驚く、と嘆く。
格差社会を生む社会を今後改革していくには、企業サイドとしては可能な限り正社員を増やすこと、また企業間や官民間などの労働移動を可能にする人事管理と企業風土を構築していくことが必要ではないか。労働サイドでも将来どのように自己実現したいかを考えた働き方をデザインする工夫が必要だろう。現状は、規制緩和される労働市場と社会とがうまくかみ合っていないように思える。国際的にも評価される新しい時代の日本的経営を早急に確立したいものだ。