古代遺跡で保護されるペルーの「無毛犬」
黄色いモホーク刈り(モヒカン刈り)のような頭の毛と、しっぽの小さなふさ以外は体毛が無く裸に見える犬、ペルービアンヘアレスドッグ(ペルー産の無毛犬)のジョッシュは、リマのプクヤーナ遺跡で観光客を迎えている。
ジョッシュと仲間たちはイングリッシュ・ポインター種と同じぐらいの大きさで、番犬の役を務めるというよりは、ペルー海岸沿いの歴史的建造物の壁の向こうで守られている。この地域は過去3000年以上にわたって、毛のない犬たちの棲息地だった。
彼らはこの場所で歴史的な風景の一部となっているが、数年前までは、もう少しで歴史の一部になってしまうところだった。
「犬たちはこのプロジェクトによって救われました。現在は安全だと言えますが、何年か遡れば、ペルービアンヘアレスドッグはペルーにおいて絶滅の危機に晒されていました」と、 ペドロ・バルガスさんは言った。彼は紀元500年頃に栄えたリマ文明の寺院を発掘するフアカ・プクラナ考古学プロジェクトのコーディネーターを務めている。
ペルービアンヘアレスドッグは、たいてい頭にモホーク刈りに似た毛としっぽの毛を生やしているが、それ以外に体毛がなく、色が濃く暖かい肌をしている。その歴史は長く悲しいものだ。1532年にはじまるスペインのペルー征服以後は特に。
現地の前インカ文明はこの犬を猟犬やペットとして扱った。海岸沿いで発見されたチム、モチェ、およびチャンカイ文明の陶器に彼らの姿を見ることができる。
犬たちはミイラにされ、人間と共に埋葬されることもあった。死んだ飼い主を死者の世界へ導き、その後も仕えるために。
しかしスペイン人たちは原住民たちと戦うために大型の戦争犬を連れてきて、しばしば在来種の小さな犬たちを襲わせた。
「そうした犬たちは4、5匹のヘアレスドッグを簡単にばらばらに引き裂いてしまうことができただろう、という研究結果があります」と、バルガスさんはジョッシュの頭をなでながら語った。
それから何世紀もの間、ヘアレスドッグはペットとして可愛がられることはほとんどなくなり、海岸沿いで軟体動物を食べて棲息していた。革を目当てに、あるいは面白半分で狩りの獲物になることもしばしばだった。革が保温性に優れているという俗説があるため、保温バッグに利用され関節炎治療に使われるのだ。
その結果、この種は絶滅の危機に瀕した状態で21世紀を迎えた。そこで政府は、1989年のフアカ・プクラナ考古学プロジェクトの提案に従い、海岸沿いの遺跡発掘現場すべてに少なくとも1つがいのペルービアンヘアレスドッグを配備して保護することに決定した。
「現在ではかなりの数が棲息しており、繁殖させている人々や、購入して輸出している人々がいることがわかっています。いまでは高級犬なんです」と言いつつ、バルガスさんは犬たちの毛のない肌への偏見もいまだに根強いとつけ加えた。
「みにくい犬、汚い犬、“パンク”犬、などと呼ばれます。 しかし、彼らは毛深い犬よりずっと清潔なのです。抜け毛を撒き散らしたりしないし、ノミもおらず、アレルギーの原因になったりもしません。そして、すばらしい友人であり、冬のあいだは生きた湯たんぽになります」
ジョッシュと母親のジャラ、兄弟のクニは、先祖伝来の土地であるリマの遺跡でくつろいでいるようだ。
「とても興味深いです。 博物館が閉館すると、彼らは“我らの家は再び我らのもの”と言わんばかりに遺跡の壁を登ったり降りたりしはじめます。彼らはここの主なのです」