そう。実際に誰も悪くはない。
「なんべんも聞いた」
「なんべんも言った」
「それで、やる気をなくしたんやんな……」
顔は見てないけど、泣いてる気配を感じた。
「普段笑ってるから、あんなに側に居たのに気付かなかったママが悪いな。母親失格やな……」
(違う……)
首を横に振った。
「気付かれたくなかってん。話したくなかったし、こうなるって、先が読めたから。せやから、笑っててん」
あれは誰のせいでもない事は、明白だった。
「あくまで、あたしにとって何が1番惨めかって事で、やる気なくしたんとは関係ない」
(やる気なくしたんは、あたしが自分に負けたからや)
「その惨めが、笑顔を深く傷付けて、やる気をなくしたんやね。ママが悪いな。謝ります、ごめんなさい」
また首を横に振った。
「それとこれとは別やから」
やっぱり、これもお互いに譲らなかった。
その後、また沈黙になった。
あたしはやっと泣き止んで、まともに話せるのを感じてから口を開いた。
「とにかく、学校は辞める。明日梅田の本屋行って、どんな種類の仕事があるんか見て来る」
「え……?」
「そういう方針で行こうてなったし」
「誰に?」
しまった、と思った。
「……パパと」
この時、ママを傷付けてしまいました。
「いつ……!?」
「ママが上に居る時。パパが帰って来て、考えたかって、話になって……」
ママから「あたしが居ない間に、勝手に決めたの?」と言いたげな疎外感の雰囲気を感じ取った。
「笑顔がママを憎んでようと、恨んでようと、あなた達にとってどんな立場であろうとも、もう1度頑張って欲しい」
恨んでもないし、憎んでもいない。
なんでそんな風に思うんやろ……。
母親失格どころか、充分過ぎるほど合格やのに。
それでも、あたしの意思は変わらなかった。